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COVID 19 Coronavirus

執筆者 岡田 恵子 Riccardo Pernechele 森畑 映美 | 2020年12月7日

コロナ禍に襲われた2020年。従業員の意識はどのように変化したのか。意識調査の実施自体を躊躇された企業も多かったと思われるが、弊社クライアント各位の2020年エンゲージメント調査結果から得られた非常に興味深いファインディングスをご紹介したい。

暦が2020年へと変わった後、企業は従業員の生活だけに留まらず、従業員自身の命をも危険にさらす今世紀最大の難題となる世界規模でのパンデミックに直面することとなった。一夜にしてオフィスは閉鎖され、現場での作業が必要となる従業員を除く、ほぼすべての従業員は在宅勤務へのシフトを余儀なくされた。

そんな中スタートした2020年、企業は従業員の声を聴き、従業員からのフィードバックを収集する場と機会を従来以上に得る必要性があると共に、その実施時期などについて、検討を余儀なくされた。通常はその年の前半に実施する意識調査を、10月以降にずらす、などの対応を取る企業も散見される。また、このような非日常の状況下においては、年に一度ではなく四半期ごとに従業員の考えや意見を収集すると決めて、パルス調査を実施する企業も見られた。さらには、未曽有の事態において従業員の考えを包括的に確認する機会と考え、例年通りの調査を実施する会社も多い。

2020年も残すところ数カ月となり、企業は従業員の感情(センチメント)にどのような変化をもたらすことができたのだろうか。従業員のニーズにより耳を傾けた結果、エンゲージメントが向上した会社、はたまたこの困難な時期に従業員への効果的なメッセージの発信がなかなかできず、従業員のエンゲージメントが低下してしまった会社など、結果はそれぞれといえる。今般の状況下に何が起こったのかを具体化するために、ウイリス・タワーズワトソンでは2020年に例年通り従業員意識調査を行ったグローバル企業によって構成されるベンチマークを作成した。このベンチマークは、72の企業にわたるおよそ90万人の従業員の回答という膨大なデータに基づいている。本稿では、このデータをウイリス・タワーズワトソンの従業員意識調査に参加した700の企業にわたる700万人の従業員の回答から算出されるグローバル基準値と比較した結果、どのような特徴があったのかについてお伝えしたい。なお、比較対象となったグローバル基準値は2019年に調査を実施した企業のデータに基づいている。

下記の図がその比較結果の一覧だ。2020年に実施された調査とグローバル基準値のスコア差は、黄色のボックスに表示されている。プラス値は2020年のコロナ禍における好意的回答が昨年以前データに基づくグローバル基準値よりも高かったことを示している。

比較結果の傾向から以下の4点が考察される。

  1. スコアの全体的な上昇
  2. 2020年の回答は、グローバル基準よりも全体的に高くなっている。すべてのスコア差がプラス値となっているだけでなく、本調査のサンプルサイズの大きさに伴い、統計的有意性も確認されている。つまり、「新型コロナウイルスの感染拡大によるスコアの跳ね上がり」が発生しており、この1年間でより多くの従業員が会社に対してポジティブな感情を抱いていることが証明されたことになる。この傾向は、弊社がパンデミック期間中に実施した企業へのパルスサーベイの傾向とも一貫している。(参照: From lockdown to reopening: Anxieties continue shaping the employee experience).

  3. 従業員と企業のつながりが深まる
  4. 昨年比で最もスコアの伸びが大きいものとして、エンプロイー・エクスペリエンス(従業員体験)における会社とのつながりに関連する4つの項目が挙がっている。これらの項目は、グローバル基準値とのスコア比で4ポイント以上の上昇がみられる。なお、「People(リーダーのあり方や企業風土、社員のあるべき姿)」の領域では「Collaboration(協働)」および「Trust(信頼)」の項目にて比較的大きなスコア差がみられる。「Trust(信頼)」の項目の中で、特にスコアの上昇が大きかった設問は、従業員とのオープンかつ正直なコミュニケーションや従業員の判断力への信頼に関係するものだ。また、「Collaboration(協働)」については、社内の部署や部門間の協働に関する質問のスコアの上昇が最も大きくなっている。さらに、「Purpose(会社・事業の存在意義)」の領域においては、「Inclusion(インクルージョン)」や「Inspiration(奮起)」の項目にも比較的大きなスコアのギャップが見られる。「Inclusion(インクルージョン)」においては、会社はより個人の違いを受け入れる環境となったことが従業員の回答によって報告されている。また「Inspiration(奮起)」においては、会社の理念や戦略の有効性に対する評価の上昇が最も高い。これらの結果は、より戦略的な明確性と信頼性のあるリーダーシップの発揮や、サイロ化の打破、従業員が一体となりながら、個々の能力を最大限に発揮できるような環境づくり、そして、自社の成功のために個々人に期待される役割をしっかりと認識するための努力が企業側にて行われている、社員にはそのように認識されていることを示しています。

  5. 貢献の領域におけるスコアの伸び悩み
  6. 2020年のスコアの上昇率が最も低いのは「Work(仕事のやりがい)」と「トータルリワード(金銭/非金銭、有形/無形の処遇を包括する総報酬)」 に関連するエンプロイー・エクスペリエンス(従業員体験)の領域であり、エンプロイー・エクスペリエンス モデルにおける一番下の行である会社全体のプログラムや制度、システムの実施などだ。 この傾向から、パンデミックを通して制度やシステム自体の即時的な変更よりも、従業員の仕事へのモチベーションや働く意義に対する意識に変化が生じたことが理解できる。理論的に考えた時にも、わずか数週間で目標設定のプロセスや報酬制度、マネジャーのケイパビリティやオペレーションのために使用されるシステムを変更することは不可能に近いが、従業員間での関係性の強化や、事業の存在意義への理解の醸成は企業側もフォーカスしやすく、実行が可能な領域といえる。この結果を通して、報酬や現状の制度、オペレーションの遂行よりも、会社への帰属意識を深めることを企業が重要視していること、従業員の認識に変化が生まれたことが分かる。つまり、それに伴った全体的なエンゲージメントの向上や離職への意欲の低下も想定の範囲であるといえる。

  7. しかし、すべてが良くなったというわけではない
  8. 全体的なスコアの上昇は見られたものの、複数の項目においてはベンチマーク比でスコアが低いものも存在する。これらは、スピードや機敏性、組織内でのイノベーションなどに加え、報酬や能力開発、業務成果に関連している。特に以下の項目においてはスコアの低下がみられる。

    • リーダーによる迅速な意思決定
    • 各組織階層への適切な権限移譲とそれに沿った意思決定
    • リーダーの変化へのマネジメント
    • 革新的なアイデアが失敗に終わったとしても、不利益を被ることのない環境
    • 業務の効率化を図るためのテクノロジーの活用
    • パフォーマンスに見合った報酬
    • パフォーマンスの向上につながるフィードバックの提供

2021年に向けて

本稿で取り上げたトピックは、2020年を駆け抜けたさまざまな企業にとって共通するキーメッセージといえる。未曽有の難題を切り抜けるために企業が実施したさまざまな努力は従業員に認識され、エンゲージメントの向上というポジティブな効果をもたらした。しかしながら、2021年、そしてパンデミック以降の世界を視野に入れた時、共通する目的の下で従業員を一致団結させることだけに留まらず、業務やオペレーションの見直し、仕事に見合った報酬を提供する制度づくりなどへと重点領域はシフトしていくことが求められる。「今何をすべきか」から「より迅速に、より的確に求められることを遂行しながら、自分への利益を見い出す」という意識の変化がニューノーマルの社会において起こることが予想される。

2020年、日本においても、従業員エンゲージメント調査のスコアを大きく伸ばした弊社のクライアントは数多い。非日常が日常となる2021年、上司と部下が同じ職場でいつもいる環境でない状態での業績評価も実施される。コロナ禍以前に戻るのではない、新しい働き方にあった仕事のルール、上司と部下の対話の在り方を構築できるのか否かが、2021年のエンゲージメント調査結果を左右すると思われる。今こそ、舵を切るときといえよう。

執筆者プロフィール

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