メインコンテンツへスキップ
特集、論稿、出版物 | ウイリス・タワーズワトソン人事コンサルティング ニュースレター

Equitable Total Rewards: レジリエンスとサステナビリティの推進(前編)

Compensation Strategy & Design|Employee Engagement |Future of Work|Talent|Total Rewards
N/A

執筆者 John M. Bremen Amy DeVylder Levanat Carole Hathaway 森畑 映美 有沢 陽子 | 2021年8月3日

社会的情勢が大きく変化した2020年以降、トータルリワード(金銭的・非金銭的報酬を包括した報酬体系)の考え方が大きく変化している。本稿ではトータルリワードを取り巻くトレンドを紹介する。前編となる本号では、ウェルビーイングやI&D(Inclusion & Diversity)の推進とトータルリワードの関連等について解説する。

2020年2月、弊社はThe Journal of Total Rewardsに、トータルリワードにおける平等性は給与のみに留まらず、組織のダイバーシティやエクイティ(公平性)、インクルージョンなどへの配慮、これに加えて福利厚生やキャリアプラン、ウェルビーイングといった報酬体系のさまざまな要素に影響を及ぼすとする記事を発表しました。弊社の長年の研究や調査では、トータルリワードの平等性は、パフォーマンスやエンゲージメントの向上、ウェルビーイングの強化、生産性の向上、ビジネスや財務の側面における持続可能な成果などを促進する働きがあることが分かってきました。また近年企業にとって重要性が増している、投資家や消費者、従業員の社会的要請に応えることにもつながります。

その後、世界の情勢は大きく変わりました。新型コロナウイルスの感染拡大とそれに伴う世界経済の停滞によって、混乱と不確実性の高い状態が生み出されたことで、ビジネスの成長のために従業員の包括的(身体的、感情的、経済的、社会的)なウェルビーイングと安全を確保することは企業にとって不可欠であることが再認識されました。また、Black Lives Matterに代表される権利運動などによって、職場の内外を問わず多くの構造的差別や社会的不公平性が明るみに晒されました。

この流れを受けて、世界中の企業は、職場の安全性と事業の継続性を両立させるために、仕事のあり方を見直すことにいち早く取り組みました。また、インクルージョン&ダイバーシティ(I&D)への取り組みを強化し、公平性をより重視するようになりました。これと並行して、トータルリワードにおいては、組織のレジリエンスや個人が尊重される職場環境、そして人的資本の持続可能性を確保することを目的に、給与・福利厚生・キャリアプランという「職場の公平性に影響を与える三要素」に焦点を合わせ、ウェルビーイングや、個々のニーズに応じた新しい働き方、I&Dの理念などに沿った報酬体系などを進化させてきました。

このような環境の変化に伴い、公平性や柔軟性、またウェルビーイングを中心に据えた新しい報酬体系の考え方がトレンドとして現れてきました。

トレンド1:トータルリワードとウェルビーイングは相互に依存する


トレンド予測:トータルリワードは、単に「ウェルビーイングを含める」だけでなく、ウェルビーイングとの連携を強めていく


新型コロナウイルス感染拡大以前から、弊社の調査や研究、またクライアントとの対話を通じ、トータルリワードにおいてウェルビーイングの重要度が高まっていることが明らかになっています。ウイリス・タワーズワトソンの「2019/2020年ベネフィット・トレンド・サーベイ」によると、調査に参加した3分の2の企業がウェルビーイングの観点を福利厚生の構築に取り入れていることが報告されています。

その後新型コロナウイルスの感染拡大に伴う企業の福利厚生の状況を調査した「ウイリス・タワーズワトソン2020 COVID-19ベネフィット・サーベイ」では、次のような結果が示されています。

  • 45%の企業が福利厚生の変更を行い、44%が今後6ヶ月以内に変更を予定している。
  • 半数以上の企業が、身体的、感情的、経済的、社会的なウェルビーイングに焦点を当てたプログラムの強化を検討している。
  • 約3分の1の企業が、社員の健康に関連する福利厚生の内容の見直しを予定している。
  • 約4分の1の企業が、介護関連の福利厚生の変更を予定している。

また、回答した企業は、以下の4つの項目において新型コロナウイルスの感染拡大を含む危機と従業員のウェルビーイングとの間に直接的な関係性があることを報告しました。

  • 健康と安全のリスク → 身体的ウェルビーイング
  • 経済面での先行き不透明感 → 経済的ウェルビーイング
  • 不安、不平等、混乱 → 社会的ウェルビーイング
  • 上記の要因に加えて、不安、ストレス、孤独、孤立などの要素が重なった場合 → 感情的ウェルビーイング

更に、CHROとトータルリワードのリーダーの中で、トータルリワードの要素とウェルビーイングの関連性について、決して新しいコンセプトではないものの、その認識が高まっていることが報告されています。例えば、給与プログラムと経済的ウェルビーイングとの因果関係や、健康や富の社会的決定要因が有色人種や社会経済的地位の低いコミュニティにおける既存の格差をさらに拡大していることなどについて企業は注目し始めています。

福利厚生を身体的、感情的、経済的ウェルビーイングの要素と関連付けることは新しいことではありませんが、多様性や、公平性、インクルージョンの観点から福利厚生と社会的ウェルビーイングの関連性を検討することは、近年一般的になってきた考え方です。これは、多様化する従業員のニーズを満たす包括的な福利厚生に取り組むことを目的としています。また、キャリア機会の公平性や公正な職場は、経済的、社会的、感情的ウェルビーイングと直接的に関連し、間接的に身体的ウェルビーイングとも関連します。

これらの傾向から、図1の「Equitable Total Rewards」モデルのように、企業はウェルビーイングをトータルリワードの中心に据えるようになってきました。

Equitable Total Rewards

この図は、ウェルビーイングを中心に、身体的、経済的、社会的、感情的の4つの象限を持つ円を示しています。内円の外側では、福利厚生におけるエクイティが身体的ウェルビーイングよりも、賃金のエクイティが経済的ウェルビーイングよりも、

キャリアにおけるエクイティが感情的および社会的ウェルビーイングよりも上位に位置しています。

図1.Equitable Total Rewards Model
  Physical(身体的) - 心身の健康
同一労働同一賃金
  • (意図的に空白)
福利厚生におけるエクイティ(公平性)
  • 医療保障
  • 遠隔診療(バーチャル診療・調剤薬局)
  • 補償内容の品質
  • 有給休暇
キャリアにおけるエクイティ(公平性)
  • 柔軟な勤務体制
  • 物理的に安全な作業環境

  経済的 - 金銭面での安全性
同一労働同一賃金
  • 競争力のある給与
  • 賃金の上昇
  • LTI (Long Term Incentive)
福利厚生におけるエクイティ(公平性)
  • 退職金・貯蓄金
  • 任意給付
  • 金融リテラシー支援
  • 福利厚生内容に関するアドバイス
キャリアにおけるエクイティ(公平性)
  • スキル開発(リスキリング/アップスキリング)
  • キャリア・パスの開発
  • キャリアの成長スピード

  感情的 - 心理的、精神的、行動的な支援
同一労働同一賃金
  • 生活賃金の保障
  • インセンティブの調整
  • 給与の明確化
福利厚生におけるエクイティ(公平性)
  • 行動的健康
  • メンタルヘルス対策
  • リアルタイムでの心のケア
  • ストレスマネジメント
キャリアにおけるエクイティ(公平性)
  • 公正な目標と期待されるパフォーマンス
  • 心理的安全性が担保された職場風土

  社会的 – つながりや居場所の確保
同一労働同一賃金
  • 公正な給与体系
  • スキルや仕事の価値に応じた給与
  • 給与体系の透明性
福利厚生におけるエクイティ(公平性)
  • 福利厚生へのアクセス
  • カスタマイズされた福利厚生
  • 家族や看護人への支援
  • パーパスを根本に置いた福利厚生
キャリアにおけるエクイティ(公平性)
  • 多様な従業員を考慮
  • ハラスメントやいじめの防止
  • 個々人を尊重する文化

こうした状況を受け、前向きな企業の多くは、トータルリワードの名称や目的をウェルビーイングに変更しています。こうした企業は、ウェルビーイングには、健康や身体的なウェルネスプログラムを超えた考え方が必要であることを理解し、公正な賃金や包括的な福利厚生、キャリア・エクイティが大きな影響を与えることを認識しています。そのため、給与や福利厚生、キャリアプログラムに費やす多額の費用をウェルビーイングを軸にして最適化することで、最大限の効果を得ることができるのです。

トレンド2:トータルリワードを組織のI&Dに関連する取り組みの一部とする


トレンド予測:従業員の公平性やI&D戦略の推進を強化していくために、トータルリワードチームの重要度が増していく


1つ目のトレンドとしてご紹介したウェルビーイングと同様に、パンデミック以前からトータルリワードとI&Dの関連性は高まっていました。弊社が2020年に発表した「ベネフィット・トレンド・サーベイ」の結果によると、世界の55%の企業が、I&Dを福利厚生の設計に大いに、あるいは非常に大きく取り入れていると報告しており、給与の公平性は数年前からグローバル企業の報酬制度における焦点となっています。

2020年の危機は、企業が組織や人事制度全体という、より大きなスケールでI&Dに取り組む機会を生み出しました。また企業の社会的責任、サステナビリティへの取り組み、環境・社会・ガバナンス(ESG)目標の継続的な採用に対して従業員を含むさまざまなステークホルダーが注目するようになり、トータルリワードの観点からダイバーシティ、エクイティ、インクルージョンへの取り組みを強化する企業の動きはさらに加速しています。

モーニングスター社などによると、ESGやサステイナブルな投資ファンドへの純投資額の流入は、財政難が続いた2020年も続いており、投資家がこれらの領域を重視していることを示しています。さらに、エデルマン社が発表した「2020年トラストバロメーター」によると、消費者は企業に対して目的や価値観に沿った行動を求める圧力を高め続けており、80%の消費者がブランドに「社会の問題を解決する」ことを求めているというデータが出ています。

消費者は、特に以下の領域において企業の責任を重視しています。

  • 組織内でダイバーシティ、エクイティ、インクルージョンの模範を示す(64%)
  • 現地の多様性をコミュニケーションに反映させている(63%)
  • すべてのコミュニティに適した、利用しやすい製品を作る(61%)

また、職場での男女間の格差是正やジェンダー・ダイバーシティの促進が、平等なトータル・リワードの実現を後押ししています。マッキンゼーの調査によると、今回の危機において、女性は男性に比べて1.8倍も雇用が不安定であることが分かりました。世界の雇用において女性が占める比率は39%に過ぎないのですが、雇用喪失の54%は女性なのです。特に女性は、仕事では重圧に押しつぶされそうになり、疲労困憊し、燃え尽きてしまったと感じ、家庭では子どもの世話や介護などに、男性に比べ圧倒的に重い責任を感じていると報告されています。マッキンゼー社とリーニン社が発表した「2020 Women in the Workplace Report」によると、女性の4人に1人がキャリアのダウンシフト、あるいは完全な離職を考えており、企業は対策を考えています。

従業員の「現状」と「理想」を考える上で、公平なトータルリワードの役割は重要になっています。従業員の声に耳を傾け多様な嗜好を理解し、公平性を考慮した上でトータルリワードを最適化することが、誰のために何を変えるべきかを知るための最優先事項となります。企業は、インクルージョンの文化を構築することが不可欠であることを認識しており、大規模なトータルリワード投資を通じてエクイティに対処しない限り、望ましい文化を実現することはできません。

トレンド3:公平性とは、同一の待遇を与えることではない


トレンド予測:選択肢、カスタマイズ、パーソナライゼーションが飛躍的に拡大する


従来、企業は「公平性」を「同一の待遇を与えること」と大まかに定義していましたが、従業員の多様性が増すにつれ、それぞれのニーズや優先事項が異なることが明らかになってきました。

多くの従業員が「自分達のニーズを知ってほしい」と声を上げる中、企業はニーズの違いを理解し、サポートする必要があります。以下に例を挙げます。

  • 異なる人種や民族の従業員のグループは、異なるトータルリワードのニーズや傾向を持っていることが多い。
  • キャリアの長い従業員とキャリアの浅い従業員とでは、ニーズや傾向が異なる。
  • 異なる勤務地の従業員ではニーズが異なる。
  • 幼い子供を持つ従業員は、子供のいない従業員とは異なるニーズを持っていることが多い。
  • ワーキングマザーとワーキングファーザーではニーズが異なる。

しかし、これらのグループに共通しているのは、それぞれのグループが自分たちのことを見てもらいたい、聞いてもらいたい、理解してもらいたいと思っていること、そして自分たちのニーズを満たしてもらいたいと思っていることです。これを受けて、企業は、多様な従業員の個々のニーズを考慮した公平なトータルリワードの拡大に真剣に取り組んでいます。

ジェンダーを例に挙げてみましょう。組織は、女性従業員の離職が労働力構成に与える影響を認識しています。企業が女性従業員を失わないために最も重要なのは、彼女たちの重要なニーズを満たす必要なプログラム、慣行、ポリシーを提供することです。具体的には、柔軟な勤務形態の拡張(空間的/どこで仕事をするか、時間的/いつ仕事をするかの双方)、介護をしている従業員へのサポートの強化や助成金を含む扶養家族支援プログラム、身体的、経済的、感情的、社会的な課題に対処するためのウェルビーイングプログラムの強化などが挙げられます。

これまで多くの企業では、年齢や性別がエクイティの主な対象となってきましたが、それも変わりつつあります。弊社の「Global Priorities for Employee Benefits」調査によると、2020年以前は人種の要素は最も重視されない属性でしたが、2020年には、将来的に人種ごとの福利厚生や年金のニーズを検討することを計画している企業が43%増加したと報告されています。2020年後半には、それがより本格的に形になってきました。

人種間の不公平感に対処するために、企業はフォーカスグループインタビューや従業員意識調査などを用いて、有色人種の従業員の傾向やニーズを知るようになりました。企業は、既存のプログラムや慣行、ポリシーを調査し、トータルリワードを通じた従業員の組織体験など、タレントライフサイクルの中でどこに偏りがあるかを調べ始めました。

広範で多様な従業員のニーズに焦点を当てるには、従業員の組織体験を形成する要素となるトータルリワードにおける選択肢、柔軟性、パーソナライゼーションの拡大が必要です。様々な調査が、トータルリワードの選択権とパーソナライゼーションがI&Dにつながり、幅広い層の従業員がそれに価値を感じているという見解を裏付けています。多くの従業員は、雇用主よりも自分自身のほうが、ライフスタイルのニーズや好みに合わせて適切な選択ができると考えています。Benefits Quarterly誌に掲載されたSteve NyceとJari Greenbaumの調査によると、トータルリワードの選択肢がある環境では、全く同じ福利厚生プランが提供されるのは154人に1組であり、従業員のニーズや好みが多様であることを示しています。

また、世界的危機は、トータルリワードの公平性とキー人材グループを区分して処遇することとの間の対立を浮き彫りにしました。多くの企業は、均質なアプローチと、複雑になりすぎる社員の区分との間のスイートスポットを模索しました。この試みを成功させるには、差別化すべき重要なグループを決定し、それぞれに最適化されたデザイン、選択肢、またはパーソナライズされたコミュニケーションのどれに重点を置くかを決定する必要がありました。(図2参照)。

この図では、x軸とy軸(xはセグメントの数、yは差別化の程度)が示されています。セグメンテーションに「One size fits all」はありません。あまりにも一般的で効果がないからです。次に「デザイン」「選択」「コミュニケーション」があり、

差別化の度合いとセグメント数の両方が増加します。最後に右上にあるのが、複雑で非効率的でコストのかかる「過剰なセグメンテーション」です。

図2.セグメンテーション範囲

トータルリワードは、企業にとって最もコントロールが可能な支出です。これを最大限に活かすことが重要ではないでしょうか。

本記事では、トータルリワードにおいて自身が選択できることとパーソナライゼーションが公平なトータルリワード及びI&Dにつながること、また平等性とI&D推進の取り組みがパフォーマンスを向上させエンゲージメントや生産性を高めることを解説してきました。トータルリワードにおいて従業員とのパーソナライズされたコミュニケーションを実現するツールとして、ウイリス・タワーズワトソンのEmbark for Total Rewardsがあります。

ウイリス・タワーズワトソンのEmbark for Total Rewardsは、個人の報酬からウェルビーイングプログラムまで、包括的にトータルリワード情報を従業員に提供するプラットフォームです。企業のブランドイメージを反映しグローバルで一貫したデザインながら、福利厚生プログラムなど各国のニーズに合わせた勤務地の国別のコンテンツを提供可能です。トータルリワード情報と利用可能なウェルビーイングプログラムをパーソナライズし、スマートフォンやタブレットなど社外のモバイル環境からもいつでもアクセス可能とすることで、最適な従業員体験(EX:エンプロイーエクスペリエンス)を提供します。Embark for Total Rewardsはグローバル企業にとって、従業員と組織とのつながりを深めエンゲージメントを高める最適なプラットフォームです。

ウイリス・タワーズワトソンのEmbarkについて、お気軽にお問い合わせください。

執筆者プロフィール

Managing Director, Human Capital & Benefits, and Global Head of Thought Leadership and Innovation

Senior Director, Human Capital & Benefits

Global Practice Leader, Rewards

リードアソシエイト
Talent & Rewards

リードアソシエイト
Talent & Rewards

Contact Us