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2020年 役員報酬等の開示状況

~2020年3月総会企業を中心とした速報版 ~

System og strategi for kompensasjon |Executive Compensation|Total Rewards
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執筆者 宮川 正康 市川 晋平 塚田 紗央里 | 2020年5月12日

昨年調査結果の振り返り
有価証券報告書における開示規制の強化により※1、昨年6月総会企業における各社の役員報酬開示は、従来のそれと比べると、情報の質・量ともに飛躍的にレベルアップしていた。

他方で、新開示規制で求められている全ての項目について、その目的や意義を十分理解したうえで体系的に、または遺漏なく開示している企業は少なく、各社の開示の程度には大きなバラツキが見られた。具体的には、国内外の投資家の要請を踏まえて、業績と支給額(率)との関連性を示したり、報酬委員会での審議内容や制度改定の背景を丁寧に説明するなど、規制で求められている以上の充実した開示を行っている事例が見られる一方で、先日公表された金融庁の審査結果にも指摘があるように※2、業績連動報酬の額の決定方法に具体性がない、指標の目標や実績の記載がない、報酬委員会等の活動内容の記載がない(あるいは具体性がない)、代表取締役等の権限や裁量の範囲に具体性がない、といった事例も多く確認された。

※1「企業内容等の開示に関する内閣府令」の改正(2019年3月末決算企業より適用)
※2「平成31年度 有価証券報告書レビューの審査結果及び審査結果を踏まえた留意すべき事項」の公表(金融庁 2020年3月27日)


2020年 調査結果(速報値) ハイライト

今回は、2020年役員報酬開示調査の速報版として、2020年3月総会企業等の対応状況について、開示企業の割合が著しく増加傾向にある項目を中心に、具体的な開示事例とあわせて紹介する。※3

※3 調査対象企業:JPX日経400構成銘柄のうち時価総額上位100社に含まれる2019年12月末決算企業等20社(2019年5月・8月末決算企業2社を含む)。集計率20%時点での速報版であるため、最終的な調査結果は大きく変わる可能性があることに留意。

表1. 2020年役員報酬開示調査 速報版
開示項目 開示企業の割合
(速報値)
昨年比
① 報酬原則 75% ↑30%UP
② 業績連動報酬の割合 80% ↑20%UP
③ 業績と支給額(率)との関係 40% ↑15%UP
④ 報酬委員会等の活動実績 80%※4 ↑25%UP

※4 曖昧な記載等を除いた場合は70%(昨年比↑20%UP)。なお、新開示規制では、指名委員会等設置会社以外の会社は、最近事業年度の役員報酬等の額の決定過程における、取締役会及び任意の報酬委員会等の活動内容を記載することが求められているところ、半数以上の企業は“取締役会”の活動内容については記載していない。


①報酬原則

各報酬要素ごとの決定方針の説明にとどまらず、報酬制度全体に係る基本的な考え方(報酬原則)を記載する企業が増加傾向にある。報酬原則に沿ったかたちで、具体的な報酬プログラム(報酬水準、報酬構成比率、業績連動報酬の仕組み等)の説明を展開する企業も増えており、ストーリー性・一貫性のある、より充実した開示を志向していることがうかがえる。
[参考事例]:アサヒグループホールディングス、資生堂、ネクソン 別紙2~4頁参照

②業績連動報酬の割合

総報酬に占める業績連動報酬の割合や、固定報酬に対する業績連動報酬の比率について、具体的な数値を記載する企業が増加傾向にある。目標業績を100%達成した場合に支給する額(標準額)を定めている場合は、標準額ベースでの割合や比率を、定めていない場合は過年度の実支給額ベースでの割合や比率を開示している。全役員の平均値のみを記載する事例もあるが、投資家が特に注目しているのは経営トップであるCEO・社長の報酬であることから、CEO・社長を中心に記載する事例も増えている。
[参考事例] アサヒグループホールディングス、キリンホールディングス、日本たばこ産業 別紙5~7頁参照

③業績と支給額(率)との関係

業績連動報酬について、業績と支給額(率)との関連性を、図表を活用して、分かりやすく説明する企業が増加傾向にある。報酬プログラムの説明のなかで、業績連動報酬の額の決定方法として記載する事例の他、目標業績に対する実績評価の一環として説明する事例もある。
[参考事例] キリンホールディングス、資生堂、ブリヂストン 別紙8~12頁参照

④報酬委員会等の活動実績

金融庁が審査結果で示している改善の方向性や、「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」の記載要領に沿ったかたちで、委員会の開催回数、個々の委員の出席状況、主な検討事項等を記載する事例の他、委員会の開催日ごとの審議項目等を列挙して記載する事例が増加傾向にある。
[参考事例] アサヒグループホールディングス、キヤノン、キリンホールディングス 別紙13~18頁参照


今後の展望

本年3月総会企業等の各社の開示は、昨年6月総会企業と比べると、先行事例として金融庁や東京証券取引所が公表した開示の好事例等を参考に対応を進められた経緯もあり※5、全般的により充実した記載となっていた。他方、本年6月総会企業については、金融庁から改善・充実に向けた検討を求める通知を受けた企業もあるため、全体的に開示情報の質・量ともにより一層底上げされ、昨年よりも開示のバラツキが減少することが予測される。

個別論点について、まず、業績連動報酬に係る業績と支給額(率)との関係については、ペイ・フォー・パフォーマンスの視点から、投資家が特に注目しているところであり、今後、更に開示が進むことが予想される。

次に、社外取締役の実効的な役割発揮が求められているなか、その評価については株主の判断(社外取締役の再任議案に対する議決権行使)に委ねざるを得ない側面があるところ、その判断材料のひとつとして、特に重要な指名・報酬委員会の活動実績をより具体的に開示する事例が増えることが予想される。開示のタイミングは株主総会前が望ましいため、既に事業報告において、指名・報酬委員長のメッセージや委員会の活動実績を記載する事例も見られる(参考事例:エーザイ 別紙19~20頁参照)。

最後に、昨今の新型コロナウイルスの影響により、(投資家から)ESGに係る非財務情報の開示の要請が益々高まっており、役員報酬についても、非財務評価に関して、より詳細な開示が進むことが予想される。定性的な非財務評価の客観性や公正性を説明するため、前述の報酬委員会等の活動実績の開示はより一層重要なものとなってくる。

なお、新型コロナウイルスは、急激な経済構造の変化をもたらす可能性もある。その場合、各社は経営戦略の見直しを余儀なくされ、また、既存の報酬プログラムもそれに沿って見直していく必要があるため、今後については、臨時的な対応と中長期的な取組に分けて、慎重に検討されたい。

※5「記述情報の開示の好事例集」 の更新(役員の報酬等)… 金融庁 2019年11月29日
「コーポレート・ガバナンスに関する開示の好事例集」の公表 … 東京証券取引所 2019年11月29日

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[別紙] 充実した開示の事例 PDF 3.2 MB
執筆者プロフィール

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