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特集、論稿、出版物 | 人事コンサルティング ニュースレター

M&Aによる事業再編と人事デューデリジェンス

~人事としてどのような心構えが必要か?~

執筆者 堀之内 俊也 | 2020年3月10日

2019年の1年間に日本企業が関わった企業合併や買収(M&A)の件数(公表ベース)が、3年連続で過去最多記録を更新した、などの報道も見られるように、M&Aに関する市場の動きは近年グローバルに非常に活発であり、私たちは毎週のようにこうしたM&Aに関するトピックを目にしている。例を挙げれば、昨年1年間にはアサヒビールによるカールトン&ユナイテッドブリュワリーズ(オーストラリア)の買収、ヤフーとLINEの経営統合、ソフトバンクによるWeWork(米国)の買収などの超大型案件の発表があったが、経済ニュースにあまり詳しくない人でも、これらのうちのいずれかは頭の記憶の片隅に残っていることだろう。
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<事業環境の変化とM&A>

Internet of Things (IoT)、AI、ロボテック、センサーなどによる近年の技術⾰新とその変化のスピードの速さは、過去の産業革命を引き合いにして第4次産業⾰命のように称されているが、このように事業を取り巻く環境が絶えず変化し続けるような状況の中では、各企業がM&Aによって事業の選択と集中を即時に図りながらイノベーションを起こして市場競争に打ち勝ち、成長を維持し続けてきていることもまた、多くの人の知るところとなっている。例えば、GoogleによるYouTubeの買収やFacebookによるInstagramの買収などは、両社の企業価値を大きく高める結果をもたらしており、近年の代表的なM&A成功事例として挙げられるだろう。最近では、デジタルトランスフォーメーションが進む金融サービス分野において、フィンテック(FinTech)のベンチャー企業を対象としたM&A件数が増加しているようであるが、この中にも、10年後に振り返ると成功事例と称される案件がいくつも含まれていることは想像に難くない。

このように、M&Aがどこか遠い彼の地で起きる出来事ではなく、日常に起こり得る事象となってくると、自分自身がいつかその当事者になるような事態に備えて心の準備をしておくようなことも必要かもしれない。そこで、本稿ではその心の準備を始めるための最初の一歩として、M&Aの交渉過程における人事デューデリジェンスの重要性や確認のポイントなどをコンパクトに解説してみることにしたい。

さて、一般的にはM&Aという一括りでまとめて称されているが、その形態にはいくつかのパターンが存在する。そこで、M&Aの主要な動機の一つである「事業の選択と集中」に着目して、企業の事業再編の手法、というもう少し広いところから整理しておこう。(図表1)

執筆者プロフィール

ディレクター
リタイアメント部門

トータルリワードの視点に基づいた人事処遇・報酬・退職給付制度の総合改革支援を中心に、30年を超えるコンサルティング実践経験を持つ。加えて、M&AデューデリジェンスやPMIなどのプロジェクト領域における豊富な経験を有する。年金数理人。日本アクチュアリー会正会員。日本証券アナリスト協会検定会員。


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