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新型肺炎コロナウイルス(COVID-19)に関する各種保険による対応と、新たなソリューション

Risk & Analytics
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執筆者 三木 健一郎 嶋倉 圭太 | 2020年2月27日

中国・武漢で発症したとされる新型肺炎コロナウイルス(COVID-19)による感染が世界各国に拡大し、未だ収束が見えない状況にありますが、企業活動にも影響が出始めています。ウイルス感染により亡くなられた方々にお悔み申し上げると共に、被患されている方々に心よりお見舞い申し上げます。

中国で自動車の生産はしていないものの、中国で生産された部品が日本、アジア、米国の工場でも使用されている企業も多く、このような状況が長引けば、裾野の広い自動車業界で、特に下請け部品メーカーが現地で生産している部品に関するサプライチェーンへの懸念がされています。

一方で、公共交通機関、ホスピタリティ業界では、企業経営に関する遅延、閉鎖、キャンセルといった動きも出始めており、それ以外の業種においても、中華圏への渡航禁止、不要不急の渡航自粛、或いは在宅勤務の推奨を行う企業が増えています。


各種保険対応

  1. 労災保険

    その折、今回の新型肺炎コロナウイルスによる各種保険の補償に関する照会を受ける機会が増えてきておりますが、例えば、シンガポールにおける労災保険(シンガポールWorkers Injury Compensation Act;WICA)では、 新型肺炎に感染した社員は労災保険で補償されるかという質問に対して、ある保険会社からは、業務で感染した場合は補償されるものの、業務外での感染の場合には、補償されないという見解が出されています。現在、MOM(労働局)からの回答が待たれています。

  2. 火災利益保険

    一方、シンガポールから運営している当社の扱う保険証券では、従前からInfectious or Contiguous Disease Extensionを付帯しており、これまでは今回の新型肺炎コロナウイルスに関する事業中断による利益保険を補償していました。ただし、この特約はWHO(世界保険機構)のパンデミック宣言により変更されています。限度額はタイムエクセス(待期期間)は、個別証券により異なります。

  3. 旅行(出張)傷害保険

    シンガポール保健省が1月22日、シンガポール人に対して、中国の湖北省へのすべての旅行と、中国本土へのすべての不要不急の旅行を延期するよう勧告をしたため、これ以降に旅行を決めた場合、武漢ウイルスに関連する保険金請求が受け入れられないと認識しています。保険会社は今回の武漢ウイルス関連のリスクを「既知」のリスクと見なしています。

    詳細は以下の表をご覧ください。

    表1:シンガポールにおける武漢ウイルスに関する保険金請求
    保険会社 武漢/湖北への旅行者 中国本土への旅行者 その他の国への旅行者
    AIA 目的地に関わらず補償は可能(1月31日現在)
    AIG 1月22日午前0時以降に発行した保険証券での補償なし 1月27日午前0時時以降に発行した保険証券での補償なし 1月31日より新規保険募集および補償なし
    Allianz Travel 1月22日以降に発行した保険証券での補償なし
    Allied World 1月23日午前0時時以降に発行した保険証券での補償なし 封鎖された都市において、1月23日午前0時時以降に発行した保険証券での補償なし 現段階では武漢ウイルスに関する保険は補償あり(今後の状況変化により変更の可能性あり)
    AXA 1月11日以降に購入された保険証券および予約された旅行について補償なし 1月27日以降に購入された保険証券および予約された旅行について補償なし 保険会社へ要確認
    Chubb 1月22日午後5時時以降に武漢に出発・帰国した旅行者への補償なし 保険会社へ要確認 保険会社へ要確認
    Direct Asia 武漢は1月22日以降、湖北は1月23日以降に購入された保険証券は補償なし 1月27日以降に購入された保険証券された旅行について補償なし 1月31日より新規保険募集および補償なし
    Etiqa/Tiqa 1月22日0時以降に発行した保険証券での補償なし 1月27日以降に発行された保険証券について補償なし 1月31日0時以降に発行した保険証券での補償なし
    FWD 1月23日以降に購入された保険証券での補償なし 1月23日以降に購入された保険証券での補償なし 保険会社へ要確認
    Great Eastern 1月24日午前9時30分以降に購入された保険証券での補償なし 1月28日0時以降に購入された保険証券での補償なし 保険会社へ要確認
    HL Assurance 1月26日以降に購入された保険証券での補償なし。1月26日までに起こった保険金求償は個別の精査による。
    MSIG(三井住友) 武漢は1月22日以降、湖北は1月23日以降に購入された保険証券は補償なし 1月27日以降に購入された保険証券での補償なし 現段階では武漢ウイルスに関する保険は補償あり(今後の状況変化により変更の可能性あり)
    NTUC Income 1月20日午後8時以降に購入された保険証券での補償なし。1月20日から6月30日までのキャンセル旅行費用に関する保険料返戻あり。 1月27日午後7時以降に購入された保険証券での補償なし。1月20日から6月30日までのキャンセル旅行費用に関する保険料返戻あり。 武漢ウイルスに関する医療費及び避難について補償あり。1月20日から6月30日までのキャンセル旅行費用に関する保険料返戻あり。
    QBE 1月23日以降に購入された保険証券での補償なし 現段階では武漢ウイルスに関する保険は補償あり(今後の状況変化により変更の可能性あり)
    SOMPO(損保ジャパン) 1月22日午後8時以降に購入された保険証券での補償なし 医療費のみ補償。キャンセル費用については補償なし。
  4. 医療保険(中国)

    中国における企業では、会社の福利厚生制度の一環として、これまで従業員向け医療保険を導入されておられない会社や、 現金支給としての制度を導入されている会社も少なくないことから、会社として個人の医療保険加入を奨励している状況がございます。 これらの保険商品は、現地採用の日本人とローカルスタッフ向けとなっています。

    検討のポイントは以下の4点となります:

    1. 死亡補償金の限度額
    2. コロナウイルスであると診断された際のお見舞金
    3. 入院手当
    4. 待期期間

各保険会社による提供商品は以下のとおりです:

新たなソリューション

ところで、伝統的な保険による対応とは異なり、保険マーケットでは新たな代替的ソリューションがリリースされています。上記のような伝統的な保険では、保険の実損てん補という性格から、アジャスターやフォレンジックアカウンタントによる損害確認プロセスが必要となりますが、そのプロセス時間、証明の困難さも懸念され、パラメトリックトリガータイプによる保険Epidemic Risk Solutionsが脚光を浴びつつあります。パラメトリックトリガータイプの保険では、損害査定が不要となりますので、イベント発生から数週間以内に保険金が支払われます。

これにより、今回のウイルスだけでなく、広範且つよりスムーズな保険金受取を可能とし、より大きな保険金額(キャパシティ)を確保することが可能となります。

ただし、パラメトリックトリガータイプの保険では、被害や損害と因果関係があると推測できるパラメータの変化が起きたときに保険金が支払われますので、事前にそのパラメーターを設定する必要があります。以下に、パラメーターとなりうるサンプルをご紹介いたします。

今後の見通し

今後の感染の広がりに因りますが、各種保険における補償に関する見解が出されると存じますが、今後の各種保険契約更新時には、前述の火災利益保険特約に関する制限や、追加保険料の設定も想定されます。

パラメトリックという実損に拘らない保険に関して、日系企業では、まだ馴染みが薄い現状にありますが、保険金請求に関する煩雑な事務、保険会社との交渉を考えますと、今後、少しずつ浸透してくるものと思料します。

執筆者プロフィール

Regional Director, Head of Japan Desk Asia
Corporate Risk and Broking

Head of Japan Desk in China
Corporate Risk and Broking

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