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「海外派遣」を多面的に捉える ~ 最新のトレンド分析のご紹介 ~

Compensation Strategy & Design
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執筆者 棟朝 竜幸 渡邉 千鶴 藤川 ちひろ | 2月 2019年

企業規模や業種に関わらず日本企業のグローバル化は留まることなく推進されているが、人材配置という切り口のグローバル化としては、Expats(日本から海外への派遣者)、Inpats(海外から日本への派遣者)、およびTCN(Third Country Nationals:三国間異動の派遣者)の増加が挙げられる。今回は、昨秋に実施した日本企業の海外派遣に関する実態調査「グローバルモビリティ報酬サーベイ」を通じて明らかになった海外派遣のトレンドを様々な面からご紹介したい。

これまで、日本企業の国境を越えた人材配置(=グローバルモビリティ)についてはExpatsに焦点があたっていたが、昨今ではInpatsやTCNにも注目が集まっている。「日本から海外へ」「より多くの国へ」といった一方向的・量的なテーマから、「グローバル規模での人材配置」「業務提携/買収を背景とした人材交流」といった双方向的かつ質的なテーマへ変化しているようだ。多くの連結子会社を世界各国に持つ中で、上級管理職を中心にどのような適正配置を行うか検討している会社は多いだろう。一部では本社のグローバル機能を集中・発展させる際に、海外法人のキーパーソンを一時的もしくは永続的に異動させる(=現地化・転籍)というケースも聞こえてくる。海外の生え抜き・買収先幹部が本社(日本)の経営に携わるケースが増える、業務統合のために管理職や中堅社員が三国間で異動・転籍する、といったストーリーもあるかもしれない。

今回は、昨秋に実施した日本企業の海外派遣に関する実態調査「グローバルモビリティ報酬サーベイ」を通じて明らかになった海外派遣のトレンドを様々な面からご紹介したい。

【2018年 グローバルモビリティ報酬サーベイ(日本版)】
2018年秋に、報酬・福利厚生を中心に制度設計および課題認識の調査を行った。本調査では売上高1,000億円超、10以上の海外拠点を有する大企業を中心にご参加いただいた。

  1. Expatsの派遣先の多様性
  2. 従来から続くExpatsの派遣について興味深い傾向がみてとれた。その一つが派遣先の多様性である。海外派遣というと一般的には現地法人や駐在員事務所、あるいは支店への派遣が一般的であるが、こうした拠点以外への派遣実績を有する会社が過半数を占めた。具体的な派遣先は公的機関や学校法人が最も多いが、特に電気機器・医薬品・化学品の業種で目立ち、企業の研究開発の一環として海外の研究機関への派遣が継続的に行われていることがよみとれる。ついで僅差で投資先法人(持分法適用会社、合弁会社)への派遣となり、これは卸売業・食料品で目立った。特に商慣行が特殊な地域への進出においては、他社リソースを活用している様子がわかる。そして最も興味深かったのが、連結子会社以外に派遣する会社のうち、株式保有関係にない法人への派遣を行っている会社が3分の1以上にのぼったことである。一般にこうした派遣は在籍出向型で行われるが、派遣に際しては相手会社との人事制度上の調整が多岐にわたり(給与制度、福利厚生制度、昇給、評価など)ハードルが高いにも関わらず、これだけ高い割合で行われていた。業種に大きな偏りは見られなかったが、具体的な派遣先は取引先や海外同業他社となっており、企業間の人材交流が国境を跨いで行われている様子が垣間見える。

  3. Inpats、TCNの増加
  4. Inpatsについては長期派遣や研修という形で4割近くの企業が受入れを実施している。また、一部の企業ではすでに派遣者が本社(日本)へ転籍したという事例も発生しており、本人や受入れ部署の希望に基づいて、もしくは経営判断で個別対応したというケースが多い。TCNについても過半数の会社で実績があり、多くの企業で様々な拠点間の人材交流が行われていることがわかった。海外のグループ企業との人材交流が増えるほど派遣者間の報酬の公平性を担保する必要がでてくるほか、経営幹部を中心に進む報酬制度そのもののグローバル化の進展に後押しされる形で、グループ全体で統一された海外派遣者報酬のポリシー(Global Assignment Policy、以下GAP)の必要が高まってくるであろう。

  5. 報酬制度のあり方
  6. 各社の海外派遣者給与の大半が購買力補償方式となっており、派遣元への帰任を前提とした海外派遣については、No Loss, No Gainの考え方にもとづいた給与設計が依然として主流であることが明らかになった。一方で一部の会社では、現地水準の給与と購買力補償方式の計算による給与結果を併用して検討しているケースもみられ、派遣目的や対象者に応じた制度を検討している点は非常に興味深い。実際、欧米企業のモビリティに関する規程は複線化されていることが多く、本人希望か会社指名か、経営層か従業員か、管理職か非管理職か、派遣元と派遣先の経済・生活環境が大きく異なるか否かによって対応を変えることがある。日本企業においてもこうした対応をする企業が増えてくるかもしれない。また、海外派遣が珍しいことではなくなった今日では、一部の企業でインセンティブ(海外勤務手当)廃止の動きもあるが、依然としてこれを支給する企業が多数を占めている。同手当は海外派遣の目的や派遣先環境の安定化に応じて減額することも十分ありうるが、実態としては不利益変更に伴う従業員・労働組合とのコミュニケーションコストの大きさにより、減額・撤廃には大きな壁が立ちはだかっているようだ。しかしグループ会社全体でのグローバルモビリティのあり方を見直す際、幾つかの日本的な手当支給の慣行は見直しの検討テーブルにのせることも必要と思われる。自社グループの海外戦略や人材配置・人事評価といった隣り合う人事制度に連動する形で、適切な報酬制度のあり方を見直していく姿勢が求められるであろう。
    中長期的な課題としては、報酬・福利厚生制度の全面的な見直し・派遣者の多様化への配慮が多くの人事担当者の認識となっており、急速に進む派遣者の多様化とそれに対応しきれていない旧来制度という構図がみてとれる。日本の報酬制度の考え方や価値観などが海外諸国と異なるという本質的な問題もあり、こうした包括的な制度の見直しは派遣者からの声に耳を傾けつつ、グローバル化という経営命題の一環として進めなければ途中で頓挫しかねない。報酬制度の改定はどのような場面においても大きな労力がかかるが、Expats、Inpats、TCNという様々な視点から制度を見直し多くの関係者を巻き込むことになる海外報酬制度の改定については、本社の強い推進力が必要となってくるだろう。

以上の通り最新のサーベイ結果では日本企業の海外派遣の実態・課題を多面的に分析している。また、上記以外にもExpatsの報酬水準のベンチマークも多く掲載しており、制度設計の際にご活用いただけるであろう。国籍・性別を問わない海外派遣者が増えてきた昨今、多様化への対応のために本サーベイがご参考になれば幸いである。

また、ウイリス・タワーズワトソンでは、これ以外にも英国エコノミスト・インテリジェンス・ユニット社(EIU)との提携により、世界約97カ国・150都市の生計費水準と生活環境を評価する「世界生計費調査(J-COL)」、「世界ハードシップ調査」を発行し、海外派遣者給与の制度設計をサポートしている。※最新調査は2019年1月末にリリース

その他、海外報酬決定方法として主流である購買力補償方式の考え方について基本的な理解を促す無料のワークショップセミナーを毎月開催しているので、お気軽にご参加いただきたい。

【各種調査の問い合わせ先】
ウイリス・タワーズワトソン
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リワード部門 グローバルモビリティ報酬サーベイ担当
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