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特集、論稿、出版物 | ウイリス・タワーズワトソン 人事コンサルティング ニュースレター

フューチャー・オブ・ワーク時代のタレントマネジメント VOL4

~ ケーススタディからFirst moverの取り組みを知る ~

Future of Work|Talent
N/A

執筆者 岡田 恵子 吉田 由起子 | 10月 2018年

ここまで、第四次産業革命において、企業や業務はどのように変わりえるのかについて焦点を当てた。そうした時代にあっては、今そして今後求められる “スキル” こそがキーワードとなり、人材の不足と余剰の二極化が生じてくる。組織もそこに人がいることを前提に構築されるものから、必要なスキルセットを明らかにして、どうすれば(どのような雇用形態であれば)そうしたスキルを獲得できるのかを考える時代になってくる。

キャリアや成長についても、「伝統的なキャリアラダー」の考え方から、「個々人のモチベーションや資質、活用可能なスキル、コンピテンシーを反映されること、スキルの磨き直し(Reskilling)の道筋をいかに提示するのかが問われてくる。そして、それはこうした変化は、事業や組織を率いるリーダーにとっては、アジリティ(俊敏さ)とデジタルネイティブ(デジタル化の動きを自ら理解し、対応できるITリタラシー)という要件を突きつけられることになる。

あたかも今後はスタートアップ企業の時代で大企業にとって成長が難しいように映るかもしれないがそうではない。多様な人材、資金、設備や設備投資力。いずれもスタートアップをはるかに上回る力を持つ大企業は、アジャイルというキーワード、そして、一つの枠組みの中でより高い効率性や生産性のために現状をマネージするリーダー以上に、変化を牽引するリーダー、デジタルとデータという基本言語を使いこなせるリーダーを得ることができれば、大きな成長の可能性がある。こうした時代には、“競合” の概念も変わり、サイバーリスクなど、一企業一産業で取り組むよりも、国の単位で産学官一体となって取り組むことが国の競争力に繋がっていく。以上がこれまでお伝えしてきたことのサマリーだ。

言うは易く行うは難し。以下図には、フューチャー・オブ・ワークに関連して、企業が事業と人材について直面するチャレンジをまとめている。本稿では、より良い社会や環境の実現に向けて、また自社と社員の成長に向けて、フューチャー・オブ・ワーク時代のタレントマネジメントに果敢に挑戦している企業のケースを3つほどご紹介したい。いずれも、ウイリス・タワーズワトソン(以降、WTW)が主に北米でかかわり、クライアント企業とともに試行錯誤をしている途中経過であることを申し添えたい。

図:フューチャー・オブ・ワークに関連する事業と人材の課題の解決に向けて こちらをクリックすると画像が拡大します
図:フューチャー・オブ・ワークに関連する事業と人材の課題の解決に向けて

【 ケース1: 世界最大級のカナダの石油・ガス掘削企業の“Reinventing Jobs”への取り組み 】

<< 背 景 >>
A社は世界中で500以上の掘削事業を25カ国以上で展開している、グローバル屈指の石油・ガスの掘削企業である。A社は、昨今開発されている掘削の自動化技術についてとそれが彼らの業務に与えるインパクトを正確に理解し、今後の人材や人材の処遇に求められる変化のロードマップを作ることに乗り出した。現在の掘削事業における役割を分析し、新たに開発されている技術がそれらの仕事にどのような影響をもたらし、効率や効果を改善する上での影響を具体化し、組織全体としてのトランスフォーメーションのロードマップを描くパートナーとして、WTWとの協働プロジェクトを開始した。

<< プロジェクトチームが取り組んだ課題 >>
A社とWTWのプロジェクトチームは、以下のテーマについて取り組み、方向性を提示した。

  1. 掘削事業における現在のタスクを分類し、役割を整理した。その上で、それぞれの役割に擁している層人件費を算定した
  2. 将来の掘削に関わる人員モデルを設計するために、現在開発中の自動化技術とその応用かのせいについて分析した
  3. 新しい仕事の進めかたにおいて、どこで、いつ、どのようなリソース(人なのか、自動化技術なのかを含め)を用いることがベストなのかを考える可能性がどこにあるのかを特定した

<< WTWの“Reinventing Jobs” とその特徴 >>
WTWはこれまで当該業界での経験が豊富であったため、今後、業務の建て直しおよびつくり直しについて、業界特性を踏まえた提案ができるポジションにいたことは利点といえる。また、A社がプロジェクトチームの提案を小さな規模でテストし、そこからの学びでさらにアプローチを磨き上げることができるような組み立てができたことも、WTWのReinventing Jobsのソリューションの特徴だ。WTWのReinventing Jobsのソリューションは、以下の3点を提供している。

  1. A社の人事および事業の実務リーダーとともに、それぞれのタスクや役割の専門家(Subject Matter Expert)、経営陣にインタビューし、同時に組織の現状やパフォーマンスに対する期待値を理解した。またそれぞれの役割の将来の変化の可能性を理解するために、ノースダコタ州にある掘削場を訪問した
  2. すべての仕事をいったんゼロベースで見直し、いくつものタスクについて自動化の可能性を分析した。自動化が人の仕事をどのように代替し、強化し、そして人間がするべき新たな仕事を作るのかについえの明確な理解のもとに、残った仕事そして新たに必要となる仕事を設計した
  3. 2018年は新しいアプローチのパイロットプロジェクトを複数の掘削場で実施し、パイロットプロ音化を支援する

<< プロジェクトの途中段階での成果 >>
従来に比べ、それぞれの業務がより効率的・効果的に進むようになり、A社は掘削場で更なる試みを実践する余力ができた。結果として、掘削の生産性と安定したオペレーションに向けて着実な成果を挙げている。また、自動化技術の導入により、掘削という業務について、より安全で予測可能な職場環境を実現することができた。これはA社にとって最優先の経営課題だった。そして、電力会社の配電・送電というコモディティビジネスにおいて、そこで働く人材に対して差別化されたValue proposition(会社が社員に対して提供しうる価値)を提示できるようになりつつある。

【 ケース2: カナダの電力会社の“Work Strategy” への取り組み】

<< 背 景 >>
B社は送電・配電などを行うカナダの電力会社だ。勤続年数の長い組合員が大半を占めている。B社の成長戦略は、新しいテクノロジーを活用することで一歩先の送配電を実現し、顧客の満足度(正確には、customer experience)を高め、コスト効率を高めて事業の規模の拡大と卓越したオペレーションを実現することにある。新しい経営陣は顧客にフォーカスし、B社をよりイノベーティブな公益事業会社に変えるべく、事業のトランスフォーメーションを彼らの最優先課題に設定した。その背景には、B社の顧客企業がフューチャー・オブ・ワークを鑑み、新しい事業やテクノロジーの導入計画を明らかにしていることがある。そうした動きを捉え、自社の将来を業務がどう変化するのか、人材やスキルはどう変わるべきか、という観点から検討を開始した。

<< プロジェクトチームが取り組んだ課題 >>
B社とWTWのプロジェクトチームは、以下のテーマについて取り組み、方向性を提示した。

  • 新しい事業戦略とテクノロジープランを前提とすると、B社全体の業務はどのように変化するのか。そして個々人の仕事や人材に対してどのようなインパクトがあるのかを特定した
  • 業務に求められるよう要件の変化がもたらす、それぞれの役割へのインパクト、人材の不足、そしてステークホルダーへのインパクトを分析を通じて明らかにした
  • 労使関係に関する戦略の重要なデータを提供した

<< WTWの “Work Solution” とその特徴 >>
人材、テクノロジー、そしてリスクがどのように関わりあうのかを具体化した。組織内で仕事がどのように変わりえるのか、仕事における自動化の果たすべき役割とそれが人材にもたらすインパクトを具体化した。こうしたデータと洞察を提供することで、B社は将来に向けて抱える課題をよりよく理解することができたと語っている。WTWのWork Strategyのソリューションは、以下の3点を提供している。

  1. 今後、人と自動化のテクノロジーがどのように協働して業務を推進していくのかという理解の下に、人材と組織の将来像を描く
  2. デジタル化の結果として、事業を成長させる今後のドライバーが何なのか、そして将来の組織能力としてどのようなレベルを目指すのかを定義する
  3. 各事業のリーダーとともに、各領域の業務はどのように変化するのか、そしてそれが今後の人員計画にどのような影響をもたらし、またこれまでとは違う別のシナリオが考えられないかレビューする。各役割ごとに可能性のある仕事の進め方を評価し、人がすべき仕事、自動化の技術に任せるべき仕事を特定する

<< プロジェクトの途中段階での成果 >>
このプロジェクトを通して、B社は今後の事業のトランスフォーメーションやデジタル化の推進の妨げとなりうる、特定の人材群についてギャップがあることを特定した。具体的には、今後のトランスフォーメーションの成功に不可欠なスキルを有したミドルマネジメントの層が25%不足していることが明らかとなった。B社はこれまで社内育成を人材戦略の基本としてきたが、事業戦略の変化やこうした事実を踏まえ、今後は必要となる人材を “buy” するアプローチ(Talent acquisition strategy)にシフトした。同時に、現有の組合員を中心とする従業員にも変わることが求められるため、今後必要となるスキルが何なのか、重要となる役割は何なのか、たとえば、顧客対応(Customer care)は今後さらに増員が必要であり、ここへの転進を会社は期待したいこと、そしてそれを支援することなど、労使関係に関する戦略やメッセージを具体化した。変化についての理解を促し、労使の話し合いは少しずつ未来志向なものになりつつある。

【 ケース3: グローバルな金融グループのAIを用いたパフォーマンスマネジメントへの取り組み 】

<< 背 景 >>
C社は、グローバルに35,000人の社員と55,000の代理店を抱えるカナダを本拠地とする金融企業である。新しいCEOのもと、従来型の保険会社からテクノロジー志向の会社へのトランスフォーメーションの只中にある。C社の戦略目標には、顧客に他にはない経験を提供すること、収益面での成長を果たすこと、そして大胆で思い切ったアイデアが生み出され俊敏に動くことのできる風土を醸成することだ。こうした事業側の要請を受けて、業績評価のあり方を抜本から見直すプロジェクトが人事部門主導で開始された。

<< プロジェクトチームが取り組んだ課題 >>
C社とWTWのプロジェクトチームは、以下のテーマについて取り組み、方向性を提示した。

  • 事業の優先順位を実現するため、業績評価の仕組みやプロエス、そして報酬との関係を抜本的に見直す
  • 業績評価のプロセスを自動化することで、そこに要した事務的な時間や労力を削減し、より重要なことに人事やマネージャーの時間を振り向けることは不可避であった

<< WTWの “AIを活用したパフォーマンスマネジメント” とその特徴 >>
WTWは人事コンサルティングファームとして、パフォーマンスマネジメントのプログラムやプロセス、そして報酬とのつながりについて多くの経験を有し、またチェンジマネジメントもサービスとして保有している。これらを組み合わせ、さらにフューチャー・オブ・ワークの視点とAIが業績評価をどのように変えうるのかという洞察を加えることで、他社にはないサポートが可能である。また設計の段階では、アジャイル、そしてデザイン思考のアプローチを取り入れた。WTWのAIを活用したパフォーマンスマネジメントのソリューションは、以下の3点を提供している

  1. 全体の再設計プロジェクトの一部として、1) デザイン 2) プロトタイピング 3) グローバルでの展開、という3ステップからなるアジャイルアプローチを提案し推進する
  2. 業績評価をゼロベースで考え、自動化の利点を定量化するためのワークショップを企画し、ファシリテートする
  3. C社のパフォーマンスマネジメントの中で、ルーティン業務の領域、すなわち自動化が可能な領域を特定し、AIを活用することで高いインパクトと価値を出しうる領域の優先順位付けをする

<< プロジェクトの途中段階での成果 >>
現在進行形のプロジェクトであるが、パフォーマンスマネジメントの刷新の鍵となる要素が特定され、今後の変革に向けた非常に説得力のあるビジネスケースができつつある。また、AIがどの部分の事務的な業務を代替し、どのように人と人とのやり取りを強化・サポートし、また評価者・被評価者にまったく新しいパフォーマンスマネジメントの経験を提供しうるのかのロードマップが出来上がりつつある。

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弊社でフューチャー・オブ・ワークを主導するRavin Jesuthasanが、ハーバードビジネスレビューより出す共著『Reinventing Jobs -- A 4-step approach for applying automation to work』 を携え10月18日(木)に来日する。スキルというキーワードから新しい時代のタレントマネジメントについて皆様とともに考えるためのセミナーも実施するので、是非ご参加いただきたい。

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