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特集、論稿、出版物 | ウイリス・タワーズワトソン 人事コンサルティング ニュースレター

フューチャー・オブ・ワーク時代のタレントマネジメント VOL3

~ 第四次産業革命の環境下で、雇用はどのように変化するのか ~

Future of Work|Talent
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執筆者 吉田 由起子 岡田 恵子 | 9月 2018年

前号では、フューチャー・オブ・ワーク時代のタレントマネジメント VOL2として、第四次産業革命で、企業や業務はどのように変わりえるのかについて焦点を当てた。特にAI、機械学習、ロボテックが私たちの仕事に大きな影響を与える (1) RPA(Robotic Process Automation)による定型業務などの処理能力の向上と自動化 、(2) AIや機械学習による大量な情報処理と共通性学習による選択肢の提示(認識の自動化)、(3) AI、機械学習、センサー、ロボテックなどの有機的に組み合わせによる人間との協働 (社会的なロボット活用)。こうした仕事の自動化の影響は、特定の業種に生じるものではない。

定型的な業務や作業は自動化の影響を受けやすく、定型化できない業務や作業、すなわち人間の創造力や展開力を用いる仕事については、現時点では自動化の影響を受けにくい。しかし、どのような業界であっても、定型的な業務や大量の情報処理などのタスクについて、AIや機械学習、ロボテックへの置き換えは起こりえる。ただ、これを「AIに仕事が奪われる」という恐怖に捉えてしまうと、私たちの仕事の進化は生まれない。社会的なロボットの活用と協働により、人間が携わるべき業務の内容や比重、フォーカスが変わり、新しい形の仕事や今はないタスクが増え、仕事そのもの、仕事のやり方ともに大きく変わりえる、ということだ。 そのために人間は必要なスキルを磨き、学び続け、変化に柔軟に対応をしていくという、仕事や働き方のマインドセットの転換が重要であることをお伝えした。

<<第四次産業革命の環境下での雇用関係の分散化、多様化>>

第四次産業革命の環境下において成長を志向するならば、どのような雇用体系の人材により事業を推進するのかも多様化せざるをえない、というのが特にグローバルで起こっている潮流だ。雇用の多様化というと、昨今の日本ではどうしても「働き方改革」や「一億総活躍社会」の多様な働き方のテーマのもと、残業抑制や時短、非正規と正規労働者の格差是正といった点にスポットライトが当たっており、政府の答申にもすでに盛り込まれてはいるが、今後求められる人材や育成への投資や、AI、機械学習、センサー、ロボテックなどの技術革新の推進は、まだ緒についたばかりであり、それに伴う柔軟な雇用体系はこれから、といった趣だ。しかしながら、事業環境の変化は待ったなしで進んでおり、企業の求める人材、働き方、そして雇用のあり方に大きな変化をもたらしている。多くの企業においてデジタル化への対応は重要な経営課題であり、そこでの最大の課題はスキル不足、すなわち高いITスキルを保持する “デジタルタレント” の不足である。特に今後企業が保有する人材やスキルは二極化し、専門性の高いスキルを持つ人材が不足すると同時に、単純・ルーティン作業の人材は余剰となる(図1)。

図1:ロボ・ギグエコノミーの勃興

こういった変化は、組織として必要なスキルを保持するデジタルタレントといわれる希少価値のある人材の維持や獲得競争を激化させることが予想され、正社員という枠組みでの採用ではまかなえないことも起こりえる。またグローバルを見ると、そもそも組織を作るということ自体が、人(=正社員)を採用することによって進められる時代から、このビジネスを立ち上げ成長させるためには、どのようなスキルが必要なのか、どのような経験や資質が求められるのか、という、個人名の前に、スキルセットという軸での議論がなされる時代に変わりつつある。「どこで人材を採用するのか」から、「必要なスキルをどこから調達できるのか。すべきなのか。その場合、そうしたスキルセットを得られる雇用形態は何なのか」を考えることが求められている。弊社も米国では、最適なWorkforceポートフォリオを考えるというプロジェクトも活発だが、いわゆる正社員以外に多様な選択肢を視野に考える時代になってきている(図2)。 

図2:既に「2つに1つ」ではない: 雇用関係は変化し続けている

「雇用の多様化=タレントの多様化」ともいえるなかで、タレントマネジメントという側面でも変化が必定となってくる。例えば、これまで正社員に対し設計されていたValue Proposition(社員に訴求、浸透するべき、成果に対して会社が提供する価値)は、正社員・非正規社員という雇用の枠組みが軸であってよいのか、という根本的な課題に直面する。キャリアや成長について、Jesuthasan and Boudreau (2018) によれば、「これまでの伝統的なキャリアラダー」の考え方から、「個々人のモチベーションや資質、活用可能なスキル、コンピテンシーを反映させたリ・スキリングの道筋の提示」に変化されていくと述べている。そうなると、これからのValue Propositionは雇用の枠組みだけではなく、個々人の保持するスキルや資質などに即した形に変わっていくことも想定される。 事例のひとつとして、米国の運輸業の会社では、期間限定であっても会社が必要とするスキルや経験を保持する人材を雇用し、その期間は雇用形態とは関係なく、正社員と同じ保障や福利厚生プログラム、具体的には健康・医療関連プログラムやフィナンシャル アドバイザリーサービスなどを提供している。そうすることで必要なスキルや経験を保持するタレントを確実に獲得し、その期間の成果と貢献を最大化させている。

<<第四次産業革命の環境下が迫る企業の変化>>

第四次産業革命は、変化のスピード、技術革新、そしてそれに伴うマーケットの変化の早さが事業環境の変化をもたらし、組織や仕事のあり方や、そこで働く人、それを取りまとめるリーダーにも新たな変化をもたらしている。ある会社が同じ仕事を半永久的に行っていくことは既に非現実的になってきており、何らかの形でイノベーションを起こしていく必然性に迫られる。近年のスタートアップ企業の活躍を見ても、アジリティ(俊敏さ)やスピードは技術革新による自動化と同じく、企業にとって生存、成長、成功の鍵となる。では、特化した専門性とスピード性の高いスタートアップのみが生き残り、大企業の存続が難しいのか。そこまで悲観的になる必要はないと私たちは考えている。ただし、アジリティやスピードがスタートアップと同じレベルで求められている環境の中で、これまでの縦割りや官僚的な運営では立ち行かない。大企業という形態は維持しつつも、実態は例えばベンチャーの複合体のようなプロジェクトベースで運営されている、などへの変化が求められよう。一例を挙げてみよう。米国のある大手IT企業は、本格的なデジタル化時代が到来する中、開発部隊を中心にシーズをニーズにつなげるという既存のやり方でイノベーションを起こし続ける難しさに直面した。そこで彼らが目を向けたのは、組織内のあらゆる人材と彼らが持つアイデアの芽だ。社員はどのような部門であれ、持っているアイデアを事業企画として提案する。それが会社の方向性、事業可能性と合致すれば、アイディアをもつ個人は独立し、そのアイデアを事業化するための資金などのバックアップを全面的に行う。アイデアを持つ個人は、かつての古巣の全面バックアップを受けながら、起業家として言い訳なしでそのアイデアの事業化に邁進する。そしてその事業が成功した暁には、当該のIT企業はその事業を買収して傘下に収め、その個人には複数の次なるキャリアの選択肢が与えられる、という仕組みを導入した。実際、独立を果たしたあと、当該企業の潤沢な事業支援機能を再認識し、成功した事業を引っさげて社員として古巣に戻り、その事業をさらに大きくし、次なる事業化に挑戦するつわものを輩出している。

多様な人材、資金、設備や設備投資力。いずれもスタートアップをはるかに上回る力を大企業は内包している。デジタル化の流れを敏速に捉え、変化に柔軟に対応し、さらに変化を作りだしていくことができれば、さらなる成長や成功の可能性は高いといえる。

ただ、このような大きな変化中で、最も大きな転換を求められるのが、会社や組織を牽引するリーダーの資質だ。アジリティやスピードといった事業を取り巻く環境変化は、組織だけではなくリーダーに求められる要件を変え、企業によっては、成功のために求められる人材要件を抜本的に見直し始めている。一つの枠組みの中でより高い効率性や生産性のために現状をマネージするリーダーから、違うことや新しいことを始めたり、違う人材、新しい人材を引き付けたり、異なる文化を受け入れたりできる人材、敏速にまた柔軟に変化に対応し、変化を牽引できるリーダーがより必要とされる。そのためには、リーダーにはビジョンを描き、語り、社員を巻き込み、といった従来の要件に加え、デジタルとデータという観点においても、これらを基本言語として流暢に使いこなす必要性がある。データが意味するものの社会的意味合いを咀嚼し言語化したうえで、時には現行のビジネスの展開とは違う別のシナリオをも考えられる力が求められよう(図3)。
 

図3:リーダーをリーダーとして機能させる要素とは (こちらをクリックすると以下画像が拡大します)

また変化の激しいデジタル化の中で、敏速のその変化を見極め、時を逃さず動き、動いた上で必要に応じて柔軟に且つスピーディーに軌道修正できるリーダーがより必要となる。もちろん、それらを可能にするには、日々変化するデジタル化の動きを自身で理解、アップデートし、ある程度対応できるようなIT リテラシーは必要不可欠となる。

では、日本企業はこれからどのように変わっていく必要があるのか。これは個々の企業のみに任されることではなく、企業が変わっていくためには多面的な要素が求められ、大仰に言えば、日本の成長戦略を考えることにも通じる。特に教育の場や仕組みやデジタル化に関連する領域への投資やリスクマネジメントなどの重要性は、どのような産業、企業においても重要であり、一企業の努力ではどうにもならない領域であろう。今まさに、行政と産・学が一体となり、ともに成長を目指すときを迎えている。もっといえば、デジタル化においては、あるひとつの国や企業が独立して何かをなせるわけではなく、国境も民族も言語も越えた共通する大きな動きの中に共存しており、いかに相互に協力し合い、新しいリスクや課題にむかっていくかが重要になってくる。例えば、「リスク」への対応、特にサイバーセキュリティーはその好例だ。ある会社をターゲットとしたサイバーセキュリティーのリスクは、単にその会社だけのリスクではなく、その他の会社、業界、そしてその国のリスクにもなりえる。今後は同じリスクを持つもの同士が手を組み、国をも巻き込み、新しい可能性とリスクに対応する必要がある。産業界が国の成長戦略として、こうしたコンソーシアム、教育や仕組みの整備を提起するときを迎えている。

フューチャー・オブ・ワーク時代のタレントマネジメントとして、これまで3回にわたりデジタル化時代の組織のあり方や働き方について寄稿させていただいた。今後AI、機械学習、センサー、ロボテックなどの技術革新がさらに進めば、それに伴い仕事のやり方は大きく変わる。固定的な組織がずっと同じような仕事をすることはなく、たとえば、期間限定のプロジェクトベースでの仕事など、仕事のありようも不可逆的に変わっていく。これにより、正社員が主流という必然性は最早なくなり、必要なスキルセットを保持する人が、必要なタイミングや期間に必要な場所で活躍をし、それに見合った処遇をされる、という流れは既に欧米では始まっている。何よりもリーダーの資質や考え方の転換が求められ、組織が求めるリーダーの人材要件も変わってくる。時代の変化を察知しながら方向性や次へのアクションを見極め、必要に応じて軌道修正を変化の早い時代にタイムリーにできる、デジタルネイティブをいとわない人材が求められる。日々進化しているデジタル化をアップデートし、対応できるようなITリテラシーは必須のビジネススキルとなるだろう。社員もまたデジタル化に伴い必要なスキルをアップデートしていく必要があり、そのために必要なスキルを磨き続けること、学び続けることが求められる。

本年10月、弊社でFuture of Workを主導する、Ravin Jesuthasanが再び、ハーバードビジネスレビューより出す共著『Reinventing Jobs – A 4-step approach for applying automation to Work』 を携え来日し、Future of Workの新たな視点をセミナーで皆様にご紹介させていただく予定である。改めてご案内を申上げたい。

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