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Mergers and Acquisitions|Retirement
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執筆者 相澤 克 | 12月 2017年

いつの間にか2017年も残すところわずか1ヶ月半となった。少し気が早い感じはするが、今年の日本産業界を振り返って見逃せない潮流といえば、「働き方改革」が筆頭に挙げられるように思う。仕事柄、様々な企業の人事担当の方々と話をする機会があるが、「働き方改革」を全く意識していないクライアント企業はなかったといっても過言ではない。新聞・雑誌などでも、「働き方改革」の関連記事が、日々あちこちに掲載されている。昨年9月、安倍首相が内閣官房に「働き方改革実現推進室」を設置し、働き方改革の取り組みを提唱してからほぼ1年が経過し、働き方改革の実態や論点がだいぶみえてきた。本稿では、働き方改革をめぐる主な論点を確認しながら、企業が考えるべきテーマを整理してみたい。

2017年もいよいよ師走を迎え、2018年の足音が聞こえてきている。2017年を振り返ってみると、日系大手企業の財務管理・品質管理の上で残念なニュースが多く聞かれた年であった。中でも、長期に亘る不正が見抜けなかった事実にはショックすら覚えたのも確かである。日系企業はここ十数年、内部統制、コーポレートガバナンス・コードの導入で、ガバナンス機能が大いに強化されたわけだが、やはり人間が構築した仕組みである以上、一度で完璧な仕組みを構築することは難しく、継続的なレビューとアップデートの必要性を改めて感じたところである。

私が所属するリタイアメント部門では、多くの日系企業・外資系企業様向けに退職給付会計にかかる退職給付債務(PBOもしくはDBO)の評価を中心としたサービスを提供している。この一年で問い合わせとして多くなっているのが、日系多国籍企業からの海外子会社の年金管理(グローバル年金ガバナンス)である。これは、コーポレートガバナンス・コードに示された原則のうち、「適切な情報開示と透明性の確保」と「 取締役会等の責務」を達成するために、少なくとも内部統制に加え経営幹部による適切なリスクテイクを支える環境整備等を行う必要があり、改めてグローバル年金ガバナンスが注目されているといえる。本稿ではグローバル年金ガバナンスの重要な仕組みの一つであるグローバルアクチュアリーについてご紹介したい。

【 グローバルアクチュアリーとは 】
グローバル年金ガバナンスを構築するには以下の2つのアプローチがある:

  • 在外子会社の制度調査(ベネフィットレビュー)から始める包括的なアプローチ
  • 既存の在外子会社の退職給付会計の評価/レポートティグを本社主導に切り替えることから始める実務的なアプローチ

上記包括的アプローチは理想的ではあるが、時間と費用に加え在外子会社の積極的な協力が必要となってくるなど、本社の負担がやや多くなってしまう。一方、実務的なアプローチではグローバルアクチュアリーという仕組みを導入することで、比較的短時間でかつ初期費用を抑えることができる。実際、海外の多国籍企業では実務的なアプローチからスタートすることが多いようである。ここで言うグローバルアクチュアリーとは、ウイリス・タワーズワトソンのような年金アクチュアリーを世界各国に有し、それぞれの国の法制・会計・税制に熟知したコンサルタントの組織的なコンサルティング体制である。すなわち、本社がある国のリード・コンサルティング・アクチュアリーが海外子会社を担当するアクチュアリー(ローカルアクチュアリー)を効果的・効率的に活用していくサービス体制を示す。グローバルアクチュアリーの仕組みの具体例は下記のとおり:

こちらをクリックすると図表が拡大します
グローバルアクチュアリーの仕組みの具体例

なお、導入当初は上記仕組みに示された項目のうち一部だけを導入することも可能である。中でも赤枠部分のタスクを中心とした仕組みを導入するのが、本社の負担も少なく、導入効果も早い段階から期待できる。

具体的にグローバルアクチュアリーの採用前後で退職給付会計の評価/レポーティングがどのように変わるかを示した図(代表的な一例)は下記のとおり:

こちらをクリックすると図表が拡大します
グローバルアクチュアリー採用前後の違い

導入後のローカルアクチュアリーは、グローバルアクチュアリーと同じ所属会社のアクチュアリーとするのが望ましい。ただ、既存アクチュアリーとの契約関係など在外子会社の協力が必要となるなど、本社の負荷も大きいことから、導入時には必ずしもローカルアクチュアリーを変更する必要はない。

【 グローバルアクチュアリーの導入効果 】
では、実際グローバルアクチュアリーを導入した場合の効果とは何なのであろうか、主要なもの下記に列挙してみた:

  • 財務諸表作成プロセスの適正化
  • 専門的な問題への助言、言語の壁の克服
  • 会計士からの質問に対して迅速な対応
  • 各国の退職給付/年金に関する法規制の変更など最新情報の入手
  • 年金制度の変更など子会社の動向を把握
  • 連結ベースでの退職給付/年金制度に関する財務リスクを事前に把握
  • M&Aの際の効率的な情報収集

ここで注目したいのはM&Aに関する項目である。海外の多国籍企業においてはグローバルアクチュアリーがM&Aにおいて重宝されている。なぜなら、グローバルアクチュアリーに依頼するだけで、買収候補の所在地にどのような制度が存在しうるのか、調査の必要性の有無などについて効率よく情報を入手できることになる。また、事業を売却する際には、対象社員に適用される制度に関する情報を短期間で入手できるからである。退職給付に関するプロセス適正化を目的として導入された仕組みではあるが、独自の進化を遂げ、ビジネスに直結する仕組みとなってきたといえる。

このようにビジネスにも直接活用できるまで機能が高まったグローバルアクチュアリーであるが、もともとは米国のSoX法(Sarbanes-Oxley Act)の適用を機に欧米の多国籍企業において一気に拡大した。日本においても内部統制の導入に伴い、一時注目を集めたが、欧米の多国籍企業に比べ導入は殆ど進まなかった。

冒頭でも述べたが、ではなぜ今、グローバル年金ガバナンス、そしてグローバルアクチュアリーなのか?やはり、日系企業の海外進出が進み、以前のように海外のことは海外に任せるといった経営スタイルのリスクが認識されたからではないかと考える。それに加えコーポレートガバナンス・コードが示されたことから、改めてグローバル年金ガバナンスが注目されているといえる。内部統制はよく「守りのガバナンス」と言われ、コーポレートガバナンス・コードは「攻めのガバナンス」といわれている。グローバル年金ガバナンスの仕組みの一つであるグローバルアクチュアリーは、欧米の多国籍企業ではM&Aにおいて有益な仕組みとして活用されていること考えれば、日系多国籍企業の「攻めのガバナンス」を支える仕組みにも十分なりうると考えてやまない。

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