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執筆者 中村 健太郎 | 2017年11月14日

既に多くの日本企業がグローバル人事に関して様々な対応をされてこられているかと思うが、筆者がクライアントから耳にしているところでは、特にこの1~2年の間に、本社経営層への外国人幹部を登用や、海外の主要拠点の経営層のローカル化/ナショナルスタッフ化といった人材のグローバル化が、今まで以上のスピードで進展しているように思われる。
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その中でも良くお聞きするグローバル人事に関する課題は、以下のようなものである:

グローバル人事の典型的な課題
図1. グローバル人事の典型的な課題

このような課題に対する施策は、置かれている状況やグローバル人事の進展度合いにもよるが、一般には以下のようなものがある:

グローバル人事施策の例
図2. グローバル人事施策の例

まず初期段階で必要となるのが、海外拠点における主要職務と主要人材の可視化である。職務については、その職務に求められるミッション及び要件や、職務遂行に必要なスキル・コンピテンシー等を把握することも重要である。ここで大事なことは、確認すべき職務内容は現在のものだけでなく、海外事業戦略を踏まえ今後必要となるであろう期待役割についても確認することである。更に、グローバル共通の軸で職務レベルの格付を実施しておくこと(いわゆるグローバルグレードの導入)により、職務の重要性に応じた人事施策の展開が可能となる。

人材の可視化については、既に本社で海外の主要幹部の経歴等の基本的な情報の収集まで進められているケースは多いかと思うが、将来の登用・配置・人材開発等の検討時の基礎材料とするために、過去の人事評価に関する情報や、場合によってはパーソナリティー診断や人材アセスメントを実施の上でそれらの結果に関する情報等も収集し、データベースとして管理できることが望ましい。職務・人材の可視化がある程度進んだ段階で、人材開発・育成や、国境・事業・法人を超えた人材登用・戦略的配置、そして主要ポジションに対するサクセッションプラン(後継者計画)の策定といった人材マネジメントの具体的施策が実行可能となる。

また、人材の異動・配置・育成をスムーズに進め、グローバル事業の戦略に紐付けた動機付けを行うためには、評価・等級・報酬制度等の人事基盤の整備が欠かせない。これまで国・事業・法人毎にバラバラであったものが共通化されることにより、本社において計画的且つ戦略的な人事の運営が可能となる。ここで重要なことは、単に共通化するだけでなく、今後のグローバル事業戦略に連動した制度にすることである。例えば将来の幹部候補に求められるコンピテンシーを定義するにあたっても、将来のビジネスモデルや事業戦略からみて重要となる項目を抽出することであったり、共通の評価基準の設定にあたっても短期の評価のみならず中長期に重要となる指標を設定するようなことである。

更にグローバル人事の徹底にあたっては、人事・報酬に関するガバナンス体制の構築、人材のエンゲージメント・現地法人の課題の把握、Mission Vision ValueやEmployee Value Proposition (EVP:従業員の視点からみた会社に帰属することから得られる価値)の浸透と必要に応じたチェンジマネジメント・コミュニケーションといった打ち手を組み合わせて展開していくことで、より効果的であろう。

上記のようにグローバル人事の課題と施策は多岐に亘るため、一足飛びに全てを揃えることは難しい。従って現実的には、まずはグローバルの経営幹部クラスから導入するようなことが一般的であるが、今後更にグローバルでの一体運営を推し進め総合力を発揮していくためには、遅かれ早かれボリュームゾーンである海外拠点のスタッフ層への展開が必要になってくるだろう。

これから抜本的な取り組みを検討されている場合にはどこから手を付けて良いのか分からない、また既にある程度の基盤整備を進めてこられた企業も、次の一手をどう打つかについて悩んでおられるケースも多いと思われる。以下はあくまでも一例であるが、まずはグローバルの経営幹部層について職務と人材の可視化、共通人事基盤の整備・人事報酬ガバナンスに取り掛かり、ある程度下地ができた所で次のステップとして更に下のマネージャー層以下に拡大していくようなアプローチである。導入方法は各社の置かれている状況や今後の戦略に基づきどの程度スピード感を持って進めていく必要があるか、等によって様々であるが、一度進めると後戻りも出来ないものでもあるため、3年後5年後のあるべき姿を見据えたうえで以下のようなロードマップに落とし込み、一歩一歩着実に進めていくことが重要となるだろう。

グローバル人事導入ロードマップの例
図3. グローバル人事導入ロードマップの例


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