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特集、論稿、出版物 | ウイリス・タワーズワトソン 人事コンサルティング ニュースレター

福利厚生保険のコスト削減とガバナンス強化 
~ 国際プーリングの有効活用 ~

Health and Benefits|Retirement|Mergers and Acquisitions
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執筆者 岡本 洋一 | 6月 2017年

先月17日、ウイリス・タワーズワトソン主催による「海外福利厚生保険セミナー」が開催されました。日本企業におけるグローバル化の進展につれ、海外駐在員の医療コストの増大や、海外現地社員の福利厚生保険に係るコスト削減とガバナンス強化が課題となっていることもあり、多くの企業がご参加くださいました。

本稿では、海外現地社員の福利厚生保険に係るコスト削減への対応策として国際プーリングを紹介致します。この分野で先進的な活動をされておりますSONY様には先日のセミナーでご講演をいただきましたが、その時のお言葉を借りるならば、「国際プーリングを導入することは簡単、国際競争力を高めていくためにも活用しない手はない」と言えるでしょう。

【国際プーリングとは?】
さて、国際プーリングとは何なのでしょうか?例えるならば、携帯電話会社が提供している家族割引契約の様なものです。今やどの家庭でも大人から子供まで皆携帯電話を持っており、家計主は支払いが大変です。家族全員が同じ電話会社を使用していれば、当然家割引契約を付けて毎月のコストを削減するかと思います。福利厚生保険の世界にも、この家族割引のような仕組みが存在します。例えば、ドイツ、フランス、メキシコ、インドネシアなどに事業展開しており、各海外現地法人の従業員のために掛けている生命保険や医療保険を同一系列の保険会社から購入している場合には、この保険商品の収支を一つに纏めて(プールして)、支払った保険料の一部を国際配当として還元してもらう仕組みがあるのです。これを「国際プーリング」と言います。現地従業員に掛けている保険契約はそのままですので、従業員へは何の影響もありません。

【8つのプーリング・ネットワーク】
「国際プーリング」は、グローバルに展開している8つのネットワークが提供しています。図1は、8つのネットワーク(横軸)と、個々のネットワークが各国のどの保険会社と連携しているのか(縦軸)を示しています(一部のみ記載)。全世界の保険会社との提携状況については、ウイリス・タワーズワトソン作成の資料をご参照ください。

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Towers Watson Media

【福利厚生保険の調査】
海外現地法人の保険情報について見てみましょう。例えば、図2の様に、ネットワークAと連携している保険会社の下で、多くの保険(生命保険、医療保険、障害保険、その他)を手配しているならば、実はもうネットワークAとプーリング契約を締結できる状態(このような状況を「ナチュラルプール」と言います)にあるのです。

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とは言え多くの企業において、そもそも海外現地法人の福利厚生保険がどうなっているのか把握できていないという現状が多いでしょう。確かに、海外人事に関連する情報を収集していくことは簡単ではありませんが、福利厚生保険の情報(現地法人毎の契約の種類、保険会社、ブローカー、対象社員数、保険料金額、更改日等々の情報)は、後述するように、効率良く簡単に収集することができる方法があります。

【国際プーリングの締結】
ナチュラル・プールがあればプーリング契約を締結しましょう。プーリング契約は本社とネットワーク間での締結であり、海外現地法人は関与しません。図3の通り、現地の保険契約に変更はありませんので、従業員の保険内容が変わることはありません。プーリング契約後は、毎年各国の保険契約の収支が一つに纏められ(プール)、プール内に剰余が発生していれば、その剰余が国際配当として本社へ還元されるのです。


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【国際配当の仕組み】
プールすると、何故剰余が発生するのでしょうか?正確には、剰余が発生する確率が高くなるということなのです(必ず剰余が発生するものではありません)。保険の世界は、大数の法則が良く効きます。より多くの保険(の収支)を纏めると、将来の見込みの精度が上がり(大数の法則)、より好ましい条件で保険を提供することができるようになります。つまりスケールメリットを効かすことで、図4の保険料内訳の上部に当たる費用/リスクチャージ(将来のリスクに備えて保険会社が、やや保守的に留保している部分)を、より低廉な水準で見込むことが可能となり、削減部分は国際配当として還元されるのです。


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【コスト削減の効果は?】
ウイリス・タワーズワトソンは、毎年国際プーリングのサーベイを実施しております。(サーベイ結果は、こちらをご参照ください。)国際プーリングを導入している約200社のグローバル企業が参加していますが、コスト削減効果は平均6%(保険料に対する国際配当の割合)となっています。なお3割以上の企業で、10%以上のコスト削減を達成しています。本サーベイに参加いただいた200社の年間保険料の平均は24億円、また一般的に海外に1万人以上の現地従業員を抱えている場合の年間保険料は20億円とも30億円とも言われます。これらの保険の内約半分くらいがプーリング可能であると仮定すると、非常に粗い概算ではありますが、コスト削減の規模をイメージすることができるかと思います。

プーリングしなければ、このような国際配当の存在はありません。国際プーリング実施に係る費用は無いため、国際配当がゼロであっても企業に追加費用が発生することはありません。また仮にプールの収支がマイナスになったとしても、企業がそのマイナス分を負担することもありません。この場合は国際配当が無いというだけです。国際プーリングは、国際配当を獲得することで実質的に保険料のディスカウントを実現する仕組みですから、検討する価値があるのではないでしょうか?

【導入に当たっての課題】
国際プーリングを導入する場合、日本企業にとって最初の課題は海外現地法人の保険の情報収集です。現地法人の人事部を巻き込んでの作業は、頭を悩ます所でしょう。しかしこれも心配はありません。8つのネットワークに依頼を出せば、ネットワークと提携している全世界の保険会社との契約があるかどうかリサーチしてもらえます。また海外現地法人の人事部門の手を煩わせることもありません。全ての保険情報が100%完璧に収集できる方法ではありませんが、8つのネットワークへの依頼は、国際プーリング導入の第一歩として検討するに値する方法と言えるでしょう。

コスト削減のみならず今後のガバナンスの観点から、まず海外現地法人の保険情報を100%収集するという方法もありますが、これには相当な時間を要することが予想されます。加えて100%の情報収集は困難かもしれません。無暗に時間だけ過ぎてしまい、その間はコスト削減できなかったという結果にもなり得るでしょう。

最初は小さく簡単な方法から実際に取り組むことが重要でしょう。その過程で、福利厚生保険のガバナンスのためのプロセスも構築され、効率的に大きく育んでいくことが可能となります。

【導入後の課題】
保険は大数の法則の世界です。国際プーリングも、なるべく多くの保険契約を取り込んでいくことが重要です。同一ネットワークと連携している保険会社との契約があるにもかかわらずプーリングされていない場合は、まずはプーリングすることの効果を分析することが重要です。なぜならば、弊社サーベイ結果より、国別とか保険契約に種類によって、国際配当の出やすさに傾向が見受けられるからです。

次に、同一ネットワークと連携している保険会社との契約がなければプーリングはできませんので、如何に同一ネットワーク配下の保険会社へスイッチングするかの検討が必要になります。

残念ながら、ここからの作業は容易ではありません。海外現地法人にも協力を仰いでいく必要があり、多くの企業でプーリングの積極的な拡張が困難になっている要因の一つではないかと推察します。何故このような活動を実施していく必要があるのか、方針/目的/効果/役割等について、各地域統括責任者とのコミュニケーションを通して、十分な理解を得ることが、国際プーリング成功の重要なポイントになります。国際プーリングは、あくまでも海外現地法人のコスト削減に寄与するものであり、本社にとっても海外現地法人にとってもWi-Winであるということを、両者共に認識する必要があるのです。

【ガバナンスの強化に向けて】
国際プーリングはファイナンスのスキームであり、積極的に活用すれば大きなコスト削減に寄与するものです。もう一つの利点はガバナンスの強化に帰するということです。通常海外現地法人での保険契約は、現地法人が独自に締結したものであり、本社がその内容を把握していないケースが多いのが現状です。しかしプーリングを実施すると、ネットワークから報告されるプーリングの決算報告書を通して、否が応にも支払実績、ブローカーフィー、保険収支等々、現地法人の保険契約の状況を詳細に把握することが可能となります。

まずは知ること、特に治外法権の海外現地法人であればあるほど、国際プーリングは有効なツールとして親会社としてのガバナンスやリスクマネジメント強化の第一歩になることでしょう。子供がどのようにスマホを使用しているのか、一体どれだけパケットを使用していくら通信費用が発生しているのか、無理矢理子供に聞いて煩がれるより、携帯電話会社から月次報告される詳細な明細を見れば良いのです。

国際プーリングの積極的な活用は、グローバルな福利厚生マネジメントの基盤を構築していくための一つのツールとして位置付けることができ、実行に移すか否かで企業の国際競争力に差が生じていくのは間違いないでしょう。

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