Skip to main content
Wynagrodzenie kadry kierowniczej wyższego szczebla
N/A

著者: 宮川 正康 | 4月 2017年

2017年3月末に法人税法の改正法案が成立・交付され、一部のものを除いて4月1日より施行された。役員報酬に関しては、2年連続での法改正となり、中長期的な業績と連動する報酬や株式報酬の損金算入要件が整備され、また、年次賞与の損金算入可能な範囲も拡大された。しかし、多様化する役員報酬を包括的に整理するかたちで、新しい法規制が立て続けに整備されたため、各企業の実務担当者にとって理解が格段に難しくなっている。そこで、本稿では、改正法の理解促進を目的として、そもそも法人税法上、役員報酬はどのように整理されているのか、また、今回の法改正により何が変わったのか、を中心にその概要を解説する。
  1. 法人税法上の役員報酬区分
    法人税法上、損金の額に算入できる役員報酬は、以下の4つの分類のうち一定の要件をみたすものに限定されている。
    イ) 退職給与
    ロ) 定期同額給与(法人税法34条1項1号)
    ハ) 事前確定届出給与(法人税法34条1項2号)
    ニ) 業績連動給与(法人税法34条1項3号)

    なお、退職給与およびストック・オプションによる給与は、従前は、上記にかかわらず損金算入可能であったところ、平成29年度税制改正により、上記区分に応じた要件を満たす場合に限り、損金算入することができるものとされた(*1)
     
  2. 各役員報酬区分の概要
    イ) 退職給与
    退職給与の明確な定義はないが、役員個人に対する所得が退職手当等として「退職所得」と認められるものについては、法人税法上も「退職給与」とされることが一般的である。所得税基本通達において、退職手当等の範囲は以下の様に解説されている。

    画像をクリックすると拡大します
    Towers Watson Media
     
    なお、伝統的な金銭による役員退職慰労金だけでなく、譲渡制限付株式や株式報酬型ストック・オプションなどの株式報酬も、上記要件を満たすことができれば、退職手当等として認められる可能性がある。ただし、平成29年度税制改正により、退職給与のうち「業績連動給与」に該当するものは、退職給与としては損金算入できなくなった。
      
    ロ) 定期同額給与(1号給与)
    法人税法上の「定期同額給与」とは、1ヶ月以下の一定期間ごとに同額で支給する給与のことをいう。毎月支払っている月例給与がこれに該当し、通常は毎月同額が支給されるため、実際に損金算入している企業が殆どである。
          
    なお、同額であるかどうかは、これまで額面ベースで判断されていたところ、平成29年度税制改正により、手取額ベース(源泉所得税や社会保険料等控除後の金額)で同額の場合も、定期同額給与とみなされることとなった。

    ハ) 事前確定届出給与(2号給与)
    法人税法上の「事前確定届出給与」とは、所定の時期に、確定した額の金銭や、確定した数の株式等(*2)を交付するものをいう。従来は、固定的に支給される季節賞与がこれに該当したが、平成28年度税制改正により特定譲渡制限付株式がこれに含まれることとなり、また、平成29年度税制改正により、特定譲渡制限付株式以外の株式を交付する場合(信託を介して交付するものを含む)や、ストック・オプションとして新株予約権を交付する場合も含まれることとなった (*3)

    株式を交付する場合の具体的なイメージとしては、例えば、職務執行開始後3年間経過後に1,000株(職務執行開始時点の時価:1,000万円)の株式を交付することを予め約束する場合が考えられる (*4)。当該3年間の株価変動により実際に役員が1,000株を受給するときの価値(時価)は変動するため、株主との利害共有や株価向上のインセンティブとしての効果が期待される。
     
    なお、株式交付時に役員に給与等所得課税されるため、その納税資金確保を目的として、交付する株式の30%~50%程度を時価相当額の金銭に代えて支給するケースもある。この場合、当該金銭支給部分は「事前確定届出給与」には該当せず、損金算入するためには「業績連動給与」としての損金算入要件を満たす必要があるものと解される。

    ニ) 業績連動給与(3号給与)
    法人税法上の「業績連動給与」とは、交付する金銭の額や株式・新株予約権の数が業績に連動して変動するものをいう (*5)。また、業績連動給与に該当する給与のうち、一定の対象者要件、算定方法要件、手続き要件を満たす場合に限り、法人税法上の損金算入が可能となる。

    従来は、単年度の業績に連動する賞与のみがこれに該当したが、平成29年度税制改正により、複数年度の業績や株価等に連動する中長期インセンティブも含まれることとなった(*6)。ただし、譲渡制限解除割合が業績に連動する譲渡制限付株式は、中長期インセンティブのなかで唯一、法人税法上の損金算入が認められなかった(*7)。また、従来、金銭による給与については確定した額を限度とすることが要件のひとつとされていたところ、株式又は新株予約権による給与については確定した数を限度とするものとされた。
     
    なお、算定方法の決定手続きや有価証券報告書等における算定方法の開示要件は、従来から大きな変更はない(*8)

  3.  

【おわりに】

本改正により、業績や株価に関する条件が付されているインセンティブ報酬について、その種類(ビークル)や評価期間に関わらず、税務上の公平な取扱いに向けて整備が進んだことは評価される。どのビークルを選択するかは、本来、「企業戦略を反映した業績連動スキームの実現が可能かどうか」で決定すべきであり、税務上のメリット・デメリットに左右されるべきではないことを踏まえると、非常に意義のある改正と言える。
 
一方で課題も残る。「業績連動給与」の有価証券報告書等における開示要件が依然として厳しく、損金算入を諦める企業も多い。他方、政府主導で進められているコーポレガバナンス強化の潮流において、株主や投資家との建設的な対話の促進を目的として、従来よりも開示に前向きな企業が増えており、こうした法改正を契機に、役員報酬に係る開示が進む可能性も大いにあり得るだろう。
 
なお、業績連動給与に係る損金算入要件は多岐にわたるため、本稿では詳細な説明を割愛したが、後日、弊社ウェブページ「ウイリス・タワーズワトソンにおけるコーポレートガバナンス支援に関する活動」に掲載する予定であるため、興味がある方はそちらも参照されたい。

【参考: 役員給与等に係る税制の整備】  画像をクリックすると拡大します

Towers Watson Media

※出所:政府税制調査会(平成29年1月27日) 財務省説明資料 [平成29年度税制改正等について]


(*1) 改正法の施行日は原則4月1日だが、退職給与及びストック・オプションによる給与、並びに事前確定届出給与たる特定譲渡制限付株式に係る給与については、その交付に係る決議が10月1日以後になされるものから改正法が適用される。なお、役員個人に対する給与等所得課税の発生しない税制適格ストック・オプションは、引き続き、損金算入はできない。

(*2) 特定譲渡制限付株式、新株予約権、特定新株予約権を含む(但し、定期同額給与又は業績連動給与に該当しない場合に限る)。特定譲渡制限付株式とは、金銭報酬債権の現物出資と引き換えに交付される株式のうち、譲渡制限期間 及び 無償取得事由が定められているものをいう。特定新株予約権とは、「金銭報酬債権との相殺により交付される新株予約権 又は 実質的に役務提供の対価として交付される新株予約権」のうち、譲渡についての制限その他の条件が付されているものをいう。特定譲渡制限付株式及び特定新株予約権については、一定の手続き要件を満たすことにより、事前の届出が免除されている。

(*3) 株式または新株予約権を交付する場合は、上場企業又は支配関係のある関係会社(当該上場企業が50%超の株式・出資を直接または間接に保有する会社等)の役員等に対する交付に限り事前確定届出給与としての損金算入が認められている。

(*4) 仮想の譲渡制限付株式を交付することと同様の効果を有するため、欧米ではRestricted Stock Unit(RSU)と呼ばれている。業績条件の無い株式交付信託も同様の仕組みとなる。

(*5) 特定譲渡制限付株式又は特定新株予約権による給与で、役務の提供期間以外の事由により無償取得又は消滅する株式や新株予約権の数が変動するものを含む。

(*6) 従来は、非同族会社が支給する給与のみが損金算入可能とされていたところ、平成29年度税制改正により、非同族会社による完全支配関係のある子会社(当該非同族会社が100%の株式を直接または間接に保有する子会社・孫会社等)が支給する給与も対象として追加された。

(*7) 欧米ではパフォーマンス・シェア(Performance Share: PS)と呼ばれている。没収される可能性のある譲渡制限付株式を新株発行により交付して資本金の額を増加させることについて、(没収されても新株発行時に増えた資本金は減少しないため)資本原則の観点から批判もあり、損金算入が認められなかった要因のひとつと推測される。

(*8) 非同族会社の役員等に対する業績連動給与においては、従来より報酬委員会等による算定方法の決定手続き(監査役会設置会社においては、監査役の過半数が算定方法を適正と認める書面を提出した場合における取締役会決議等も認められている)、及び有価証券報告書等における算定方法の開示などが求められている。

他方、平成29年度税制改正により、非同族会社による完全支配関係のある会社の役員等に対する業績連動給与の算定方法についても、当該非同族会社における上記決定手続きを経ることとされ、また、当該非同族会社の有価証券報告書等において開示されることとされた。

本稿に記載する内容は、改正税制、政省令、並びに過去の基本通達等を踏まえた一定の解釈や推測を含むものです。記載内容の正確性等に関しては税務当局や法律専門家に必ずご確認ください。