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経営者指名の現場から - 第三者評価が果たす役割 -

危機下で表出する振舞い・潜在的なリーダーシップリスク・生まれもった性格適性を、客観的に見極める

Executive Compensation
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執筆者 高岡 明日香 | 2月 2017年

企業の成否を分ける最大のリスクのひとつが、誤った「経営者指名」である。歴史を紐解けば自明であるにも関わらず、今日においても、企業間の取組みにこれほど温度差があるテーマも少ないように思う。本稿では、経営者指名の現場から、貴社の後継者指名におけるリスクを最小化する「第三者評価の手法とプロセス」について整理したい。

経営者候補者となるエグゼクティブは、平時においては皆「Strong Performer」といえる。会社で一二を争う実績を上げ、かつ人望も厚いゆえに候補者に選任されるわけである。但し「経営者」指名において見極めるべき項目は多岐にわたり、一般的な人事考課評定ではカバーしきれない項目も多い。例えば、①強いストレス下においてどの程度平時と同様のパフォーマンスを発揮できるか、②危機に際して表出する生まれもった性格(生来属性)は当該経営職の要件に照らして適性の高いものであるか、③潜在的なリーダーシップリスクはどの程度か、という点である。欧米の後継者計画(サクセッション・プラン)においては、これらは既に標準項目として評価対象となっている。これらを中立的かつ客観的に評価し、経営者指名におけるリスクを最小化することが、会社の成功に大きく寄与すると考える。

経営者の選任基準には諸説あるが、一例として上記項目を含めた私共の整理の仕方をご紹介したい。

  • 資質 - 性格、動機傾向、価値観といった生まれ持った資質に近いもの
  • 保有 - 結果を出すために保有していることが必要となる知識、専門性、経験、人脈など
  • 顕在 - 結果を出す過程で顕在化する要素として、能力、行動特性、リーダーシップリスク、企業文化とのフィット、会社の経営理念の体現度など
  • 結果 - 実績、周囲の評判、人望、ポテンシャルなど

上記の選任基準を縦軸に、その評価方法を横軸におき、それぞれの評価可能レベルを三段階(十分評価可能、評価可能、評価困難)で示したものが下表である。


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上表の横軸に示した評価方法のうち、経営者指名における第三者評価手法として代表的なものが、「パーソナリティ検査」「行動探索型インタビュー」「360度リーダーシップ調査」の3つである。社内の人事考課評定に加え、これら3つの評価手法を組合わせることで縦軸の基準項目をほぼ網羅できることがお分かり頂けるだろう。それぞれの具体的な内容は下記のとおりである。

  1. パーソナリティ検査 (心理テスト)
    心理学的に確立された手法を用いて、オンラインで調査実施。各人のパーソナリティ面の特徴や価値観などを確認することができる。メリットは、事前の対策が難しいため、本人でさえ把握していなかった心理学的特性を把握することが可能である点にある。ただし、極度に強い思い込みがある人材の場合は結果にブレが出る場合もある。
     
  2.  行動探索型インタビュー
    専門性を持った評価者が、思考・行動特性を確認するためにインタビューを行うもの。実績・成果を出すために発揮したコンピテンシー、再現性の高い行動特性、能力の内容とレベルを確認する。メリットとしては、客観的第三者の専門性・力量次第で、経営者としての資質についての深い洞察や、人材市場における他の候補者とのベンチマーク(比較)等も可能となる。ただし、インタビューでの回答は本人の自己申告のため、思考・行動特性を完全に把握することは困難であり、組織に対する真の影響力等の確認は限定的となる。
     
  3.  360度リーダーシップ調査
    本人をとりまく周囲(同僚、部下、上司、社外関係者等)に対してのヒアリング、あるいはオンラインでの調査を実施する。リーダーシップリスク、品格、周囲の評判・人望、会社の経営理念の体現など、本人からの確認が困難なものを確認する。メリットとしては、インタビューだけでは取得困難な情報が取得できることが挙げられるが、その一方で、実施目的等に対して憶測が入り恣意的な評価となるリスクもある。

先に示した3つの問いは、これら評価手法によって精度高く見えてくる。①強いストレス下において、どの程度平時と同様のパフォーマンスを発揮できるか、②危機に際して表出する生まれもった性格(生来属性)は当該経営職の要件に照らして適性の高いものであるか、については、パーソナリティ検査結果で浮き彫りになる。また、③潜在的なリーダーシップリスクについては、360度リーダーシップ調査が大きく貢献するところである。

先述のとおり、経営者指名における評価手法にはいずれにもメリット、デメリットがある。ゆえに指名を担う際には、複数の手法を組合わせることでデータポイントを増やすこと、各手法の結果を包括的かつ慎重に分析、考察、議論した上で結論を出す必要がある。

経営者指名に際して、株主を始めとするステークホルダーの視点に立ったときの要諦は、一連の指名プロセスにおける中立性、客観性、透明性の担保である。恣意を排した公明正大な指名であることを内外に示すことは、当該企業に対する信頼に繋がる。また社外取締役の視点に立つと、候補者それぞれについて質・量ともに十分な人材情報が提供され、それらを踏まえた透明性の高いプロセスを経て指名が行われるということが重要である。先に示した各種アセスメント手法を組合せ、それらを得意とする第三者評価機関と協業することで、中立性、客観性を担保しながら、より多面的な評価を実現し、経営者指名を成功に導いて頂きたいと切に願っている。

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