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執筆者 河原 索 | 2015年9月23日

今回は『サクセッションプランニング(後継者計画)』についてご紹介します。サクセッションプランニングとは、各経営陣幹部およびそのポストの後継者として相応しい人材のリスト化とその育成プランのことで、経営人材の継続的な安定供給を高いレベルで行っていくための仕組みのことです。

サクセッションプランニングは概念としてはそれほど難しいものではないのですが、実際の運営は大変です。慎重かつ大胆に山のような要素を考えなければいけないのですが、意図しない形で社内政治も動けば、事業環境も激変します。形を整えたり、議論のための定期的な会議を設定することはできても、本当に良い後継者指名につながるサクセッションプランニングは非常に難しいものです。

サクセッションプランニングの先進国であると思われる米国においても、必ずしもうまくいっているばかりではないようです。例えば、2014年のIEDとスタンフォード大学のレポート(*)によると米国におけるサクセッションプランニングの現状と課題について以下のように書かれています。

  • サクセッションプランニングの形は作っても、後継者のスキル・経験の要件を決めて、それに相応しい具体的候補者としてリストアップするまでは機能していない。
  • 重要性は理解しつつも、実際問題として経営幹部のパフォーマンスについて率直かつオープンに議論するような組織風土までは醸成されていない。
  • プログラムの運用が後継者不在のリスク消し込みに留まり、実際にベストの後継者の人選にまで踏み込んだプランニングまではできていない。
  • 指名(諮問)委員会の役割・機能や、トラッキングすべき評価指標が明確に定められておらず、実際の活動が十分ではない。
  • サクセッションプランニングとリーダー開発プログラムがそれぞれ別個に運営され、タレントのパイプライン形成が順調でない。

ぱっと見では、これでは日本の状況と変わらないと思われるかもしれません。米国でも難しいと言われているなら日本でも出来ていなくても仕方がないと安堵するかもしれません。でも、そのように捉えてしまえばそこで彼我の差は縮まってはいきません。

これらはよりストイックに二つの視点から受け止めるべきでしょう。一つが、そもそも米国ではサクセッションプランに対してより目線が高く、厳しいスタンダード設定がされているという点。もう一つが、米国企業でさえこんなに苦しんでいるのであれば、我々日本企業にとってみればもっともっと苦しいものになると覚悟を持たなくてはいけないという点です。

ではどうすべきかが次の議論です。結論としてはCEO、社長、取締役、および経営チームの仕事に占める後継者育成の真剣さおよび重要性認知の度合いを引き上げる事に尽きるのですが、それでは半ば精神論に終始してしまうため、テクニカルな面についても触れていきたいと思います。

日本におけるサクセッションプランニングの現状の特徴としては二つあります。一つがコンティンジェンシープラン(危機時に空白ポストをつくらないための予備対応計画)に留まっている会社が多いこと。もう一つが、仕組みの整備ばかりに議論が集中しすぎて中身の充実が弱い会社が多いことです。

いずれも、サクセッションプランニングの漠然とした必要性から発し、制度や形ばかりの議論に終わっていることに起因します。むしろ、サクセッションプランは『必要な運営のあり方を描いた上で、それを制度設計に落とし込んでいく』ことが求められます。このアプローチの方が議論の深まり方が格段に高まりますし、実際に機能する仕組みづくりにつながっていきます。

これを具体的に進めるために、サクセッションプランニングにおける運用のポイントはどこで、そして、それに合わせてどのようにプログラム設計をしていくべきかについて、5つの要点から解きほぐしていく方法について以下ご紹介します。

  1. 01

    後任者の要件を描くこと

    【運 用】

    後任者リストをつくることがサクセッションプランの主たる目的ですので、要件に合った後任者を選ぶことがサクセッションプランの運用の主題となります。最適な人選のためには、漠とした優秀さ、数字での実績というレベルだけでは判断できません。現在および将来の事業環境、社内体制、自社の戦略の中でどのような人物が必要なのかについても考慮した人選を行っていくことになります。

    【制 度】

    上記のような運用を想定すれば後任者の要件を突き詰めていくことができるようになり、更には要件にあった候補者が適切に選ばれるような制度作りも考えていけるようになります。すなわち、サクセッションプランニングでの候補者の評価軸、評価基準が決まってきますし、要件に基づく人選を事実に基づいて客観的行っていくための仕組みやツールのあり方、更にはそれを判断していくに相応しい責任者や体制のあり方までを制度として固められるようになります。

  2. 02

    人材ニーズプランを描くこと

    【運 用】

    サクセッションプランの中で後任者を選ぶ際には、個別ポジションだけでなく、全社的な事業の成長やその方向性に合わせた人材ニーズに合わせて対象者のフォーカスを考えていきます。事業上クリティカルで特に重点的に管理すべきコアポストはどれか、事業の成長に合わせてどの国、どの事業にリーダー人材が必要となってくるのかを考えた上で、特定されたコアポストの人材のパイプラインの安定化を目指していくことが必要となってきます。

    【制 度】

    人材ニーズプランは中期経営計画、事業計画、組織機構改革、人員計画等とサクセッションプランニングを連動させながら考えていきます。この人材ニーズプラン、或いはターゲットとなるコアポスト群を具体化していくことで、サクセッションプランニングの対象組織、対象事業や対象ポストの基準、更にはその責任・管理主体も自ずから整理していけます。

  3. 03

    人材開発プランと絡めること

    【運 用】

    サクセッションプランニングの運用には人材ニーズ側だけではなく、人材サプライ側の議論も必要になってきます。サクセッションプランニングが上澄みだけを掠め取る仕組だと永続性がなくなってしまいます。だからこそ安定したリーダー人材の供給パイプラインをつくれるようサクセッションプランニングと、リーダー開発プログラムを連動させていく運用が必要になってきます。

    【制 度】

    リーダー人材の供給不足を避けるためには、まずは、現状の人材供給の質・量・多様性およびタイミングおよび安定性について把握し、それをどのレベルまで高めていく必要があるのかの議論は欠かせません。リーダー開発プログラムとサクセッションプランニングの連動のあり方を具体化することで、双方のプログラムの効果を大きくすることができます。サクセッションプランニングの観点からみた人材の質・量・多様性の不足の状況や人材拡充の時間軸に合わせ人材開発プログラムを改定していくことが求められます。

  4. 04

    人材ソースを決めること

    【運 用】

    実際問題として、後任者は社内だけから選ばれる訳ではありません。社外も含めてベストな人材を選べるようにしていくことも必要な運用となります。そのための、ソースとなる人材供給チャネルを最大限に活用していくことを考えていかなければなりません。

    【制 度】

    サクセッションプランのリストの中から後任者を最終決定する際に、社内から適任者がいない場合は社外のヘッドハンティングも含めて検討していけるよう、幾つかの信頼できるエージェントから情報が入手できるようにネットワークをつくり、定期的に情報交換していくことをサクセッションプランニングのスケジュールに組み込んでおくことも良いでしょう。また、社内候補だけでなく社外の候補とも比較する前提でプログラムを組んでいくことは、内部の候補者のレベル引き上げにも貢献します。

  5. 05

    定期的にレビューすること

    【運 用】

    後継者リストとその開発プランは立てたら立てっぱなしではなく、定期的に確認して(Revisit)、今後の機会と脅威に対してベストの人選であるかどうかを検証し(Review)、より良い候補者リストとそれぞれの現状に合った開発プランに書き換え(Revise)ていくことが求められます。

    【制 度】

    サクセッションプランニングの後継者リストがアップデートされ続けるよう、また候補者にベストの成長機会が提供され続けるよう、必要なタイミングで必要な取り組みがなされるよう、サクセッションプランニングのプロセスとスケジュールを組み立てていきます。また、これができるために社内に人材アセスメント専門のチームを設置したり、その結果を判断する体制を構築していくことも重要となってきます。

    これら5つの要点について運営および制度の議論を十分に行った後に、最後にもう一度精神論の登場です。運用や制度に魂を込めていくために、経営による後継者育成の重要性認知と真剣さのソースをたっぷりと絡めていきます。これらが組み合わされば機能するサクセッションプランが出来上がることになるでしょう。

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